岐阜大学の研究グループは,液中のpHに依存して蛍光色が変化する蛍光物質を開発した(ニュースリリース)。
研究グループは近年,硫黄原子と複数の窒素原子を導入した低分子有機化合物群(アミノチアゾール)の合成研究を展開してきた。その中で,五員環のある特定の位置に窒素原子を導入した新たな化合物が,蛍光を示すことを見いだした。
一般に多くの発光化合物は,化合物を構成している炭素骨格が平面状に存在しているのに対して,開発した化合物は五員環の部分と窒素原子が導入された部分が大きくねじれている。研究グループはこの特徴的な分子構造に,異なる置換基や元素を組み込むことで,発光色を青色から赤色まで制御しうることを明らかにしている。
今回,この新たな蛍光化合物の特定の部位に塩基性官能基を導入することで,単一の蛍光発光分子でありながら,酸の添加という操作により発光色を微調整し,多彩な発光を実現できる系を構築した。
具体的には,青色蛍光化合物に塩酸を加えていくと,青色の蛍光は徐々に消え,代わって黄色の蛍光を示す。酸の選択によっても蛍光色が異なる。さらに,ある特定の酸との混合比を調整することで,たった一つの分子からなる,白色発光も実現した。
蛍光灯は,赤,緑,青色の組合せで白色発光を達成している。それに対して,青色と橙色のように,二色を組合せて白色発光を実現することもできる。
ここでは当量比の微調整で,もともと青色発光化合物だったものの一部が,酸の作用で橙色発光化合物に変化し,これらで白色発光に至っている。この化合物の蛍光は酸と塩基の中和反応に由来するため,酸を加えて発光色を作成した後に,塩基を加えると,もとの青色発光色が再現される。
今回の研究成果は,有機溶媒中における新たな蛍光発光化合物の反応を明らかにしたもの。今後,この化合物の水への可溶化や有機フィルム内への固定化が成功すれば,幅広い用途への応用が期待されるという。
具体的には有機EL照明や有機ELディスプレー,重金属などを検出するための化学センサーチップなどへの応用などが期待される。この化合物は単一の分子で多彩な色を発光するため,この化合物を応用した新しい製品は,製造工程の簡略化につながり,比較的低コストで普及できる可能性があるとしている。
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