東北大学，京都大学，フィンランド トゥルク大学，仏Soleil実験施設，広島大学，広島工業大学，理化学研究所，高輝度光科学研究センターの合同研究チームは，リボ核酸を構成する塩基分子の一つであるウラシルにヨウ素を付加したヨウ化ウラシル分子にＸ線自由電子レーザー（XFEL）施設SACLAから供給される非常に強力なＸ線を照射し，分子の中で起こる電荷と原子の動きを可視化することに成功した（ニュースリリース）。

XFELは非常に強力で，わずか10フェムト秒の照射時間という極短パルスのＸ線。XFELを用いると，1個の分子からたくさんの電子を一瞬に引き剥がすことができる。

その結果，電荷間の反発力で分子を破壊する「クーロン爆発」という現象が誘起される。クーロン爆発で放出される電荷を帯びた原子（イオン）の速度は，それぞれのイオンが分子の中で占めていた位置を反映するため，イオンの速度を計測することでクーロン爆発した瞬間の分子の形状を知ることができる。

研究では，1個のヨウ化ウラシル分子に強力なXFELパルスを照射して得られる多数のイオンの運動量を計測し，数値計算を用いて実験結果を再現することで，XFEL照射中および照射後の非常に短い時間に分子内で起こる電荷と原子の動きを明らかにした。

ヨウ化ウラシル分子は放射線増感剤として働くことが知られている。このような放射線増感分子が生体あるいは癌細胞に損傷を与える分子レベルの機構は解明されていない。

研究では，ヨウ化ウラシル分子がＸ線を吸収すると多数の高エネルギーイオンと低エネルギー電子からなる「放射線スープ」が生成される過程を解明することによって，局所的に生成する放射線スープによる放射線増感効果の機構を分子レベルで明らかにしたとしている。

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