国立天文台ら,超巨大ブラックホール周囲の磁場構造を解明

国立天文台らの国際研究チームは,米国カリフォルニア州,アリゾナ州,ハワイ州にある電波望遠鏡を結合させて,天の川銀河の中心にある巨大ブラックホールいて座Aスター(Sgr A*)の極近傍領域に付随する磁場の証拠を初めて観測的に捉えた(ニュースリリース)。

今回,直径4000kmに相当する巨大な電波望遠鏡を構成して波長1.3ミリメートルの電波の観測を実行した。これにより約50マイクロ秒角の解像度を実現した。

観測から,ブラックホール半径の6倍程度の領域から出る放射が,直線的に偏光している様子が初めて計測された。これより絡まったスパゲッティ状の複雑な磁場構造が示唆され,また,それが15分程度の短い時間の間に変動していることも初めてとらえられた。

今回の結果は,ブラックホールの極近傍領域で初めて偏光を検出し,ブラックホール周囲の磁場構造を明らかにしたもの。ブラックホールの周囲では,降着円盤からのガス流入やジェット生成などの活動的な現象が「ブラックホールエンジン」として働くと考えられており,これまでの理論モデルでは,そのいずれにも磁場が重要な役割を果たしているとされてきた。

今回の観測によってブラックホールの周辺では磁力線が複雑に絡まりながら,短い時間の中で躍動的に変動している様子が初めてとらえられた。これはこれまでの理論モデルの枠組みを観測的に裏付けるもの。

観測によって明らかになった磁場の複雑な構造やその時間変動は,今後ブラックホール極近傍領域の物理をさらに詳しく調べる上でも貴重な情報になると期待されるという。

今回の発見は,超巨大ブラックホールの周囲で起こる質量降着やジェット生成等の活動現象の駆動原因とされる磁場の理解にとって非常に大きな成果であり,今後ブラックホールそのものを直接撮像するEvent Horizon Telescope計画にとっても重要な一歩となるとしている。

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