NIFS,高速2次元マイクロ波カメラを開発

自然科学研究機構 核融合科学研究所は,高温プラズマを計測するために,高速2次元マイクロ波カメラを開発した(ニュースリリース)。このカメラは,マイクロ波が霧や衣服,壁,土を透過することから,多くの応用が期待される。

核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)では,1億度にも達する超高温のプラズマを生成しており,そのプラズマ内に生じている複雑な現象を観察することは,核融合研究において重要となる。

超高温のプラズマの計測には様々な手法があるが,同所の研究グループでは,電磁波の一つであるマイクロ波を利用した計測手法として,高速高感度のイメージセンサーを利用したビデオカメラの開発を行なってきた。

これまで,米国では,1次元のマイクロ波イメージセンサーを用いたプラズマ計測が行なわれていたが,一度の計測で得られる情報が非常に限られており,これを大幅に改善できる2次元のマイクロ波イメージセンサーの開発は,プラズマ計測において重要な課題の一つだった。

2次元のマイクロ波イメージセンサーを開発するためには,マイクロ波を検知する1次元のセンサーを並列させる必要があるが,並列させると各センサー間で相互干渉を起こしてしまい,正確な情報が得られないという問題があった。

研究グループはこの問題を,アルミ板を使用して内部構造を工夫することで解決し,マイクロ波を高速高感度で検知できる8×8画素の2次元マイクロ波イメージセンサーを新たに開発。これにより,LHDに閉じ込められた1億度近い超高温のプラズマを毎秒百万フレームという高速で撮像することに,世界で初めて成功した。

新たに開発した2次元マイクロ波イメージセンサーは,64個のセンサーから構成されているが,従来の問題であった各センサー間の相互干渉が原理的に発生しない。また,マイクロ波を利用した計測手法において重要な指標である「強度」と「位相」を同時に測定することができることから,このセンサーは産業分野など広範囲な応用が期待できる。

従来のマイクロ波イメージングは,レーダー方式や1次元センサーで走査するスキャナー方式などを用いており,低速だった。今回の研究成果を用いることで超高速マイクロ波カメラの実現が可能となり,マイクロ波の応用範囲が大きく広がる。

また,マイクロ波は霧や衣服を透過する。このマイクロ波カメラを用いることで,濃霧などでもより早く正確に他の飛行機や船舶などの位置が把握できるようになる。また,空港の保安検査場などでは,衣服に隠された武器などの金属品を短時間で発見することが可能となる。さらに,マイクロ波は土や壁も通過するため,地中の金属の探索や非破壊検査に応用することで,作業効率を大幅に向上させることができる。

開発したイメージセンサーの画素数は,高温プラズマ計測には十分だが,産業応用のためには画素数を増やす必要がある。研究グループでは今後,電子回路の専門家の協力を得て高画素センサーの開発を進めるとしている。

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