大阪大学と原子力研究開発機構(原研)の国際連携研究チームは,ハイパワーレーザーを使い,極限状態の原子の世界を初めて明らかにすることに成功した(ニュースリリース)。
これまでにも米国の超大型のX線自由電子レーザー(XFEL)を用いて,X線発生研究が行なわれてきたが,理想的な固体密度のプラズマの実現には至っていなかった。
今回,研究チームは,世界最高のコントラストを実現している原子力機構のハイパワーレーザー装置(J-KAREN)で,非常に強いレーザー光を固体物質に照射してX線を発生させ,それにより極限状態を創り出す実験を行なった。
その結果,1500万度の輻射温度のX線を発生させて,固体密度で300万度の温度のプラズマ状態を実現することに成功した。そして,強いX線から創り出された極限状態では,内殻電離状態イオンが多数生成され,強力なX線が爆発的に増加していることを発見した。
今回の研究によって,極限状態での原子の振る舞いが解り,超新星爆発など宇宙で起こっている極限状態を理解する手掛かりとなることが期待できる。
また,レーザー光の強さを上げれば上げるほどX線の発生効率が爆発的に増加するということも解り,世界に数か所しかない大型施設でしか利用できなかったX線の利用の門戸を広げ,より精密なX線非破壊検査や新物質創成といった産業応用にもつながるとしている。
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