阪大,液晶におけるトポロジカル欠陥の制御に成功

大阪大学は,ネマティック液晶薄膜におけるトポロジカル欠陥の数と形状を制御する技術を開発した(ニュースリリース)。また,作製したトポロジカル欠陥を用いることで,大きさ数ミクロンの微小物質を2V以下の小さな電圧で可逆的に動かせることを示した。

液晶のトポロジカル欠陥は3次元空間では点または線として存在し,一様配向した液晶とは異なる振る舞いを示す。例えば,トポロジカル欠陥の導入により,液晶の粘弾性的な性質が変わり,自己修復能を持つゲル材料を実現できることが知られている。他にも,光渦と呼ばれる,レーザ加工に用いられる特異な光波を生成できる。

しかしながら,これまでの研究では偶然生成されたトポロジカル欠陥,あるいは特殊な形状を持つ基板を用いて生成されたトポロジカル欠陥が利用されることが多く,その形状を任意に制御することは容易ではなかった。

研究では,液晶を保持する基板の界面に特異点を有する配向容易軸をパターニングすることで,液晶ディスプレイと同じサンドイッチ型の素子において,任意の数と形状のトポロジカル欠陥を生成できることを明らかにした。

実験では,光配向法を用いて液晶を保持する2枚の基板の界面に配向容易軸をパターニングした。パターニングした配向容易軸はそれぞれ特異点を持ち,かつ異なる欠陥強度を持つため,偏光顕微鏡で観察すると特徴的な模様が見える。

パターニングを行なった2枚の基板を,その特異点が若干ずれるように配置すると,特異点を結ぶようにトポロジカル欠陥が生成されることが見出された。誘起されるトポロジカル欠陥の本数は配向容易軸パターンの欠陥強度の2倍となり,その形状は特異点周りの液晶の配向に支配されることが明らかとなった。

この性質を利用し,基板界面の配向容易軸パターンを変えることで,2枚のガラスに挟まれた液晶薄膜中に様々な形状のトポロジカル欠陥を誘起することに成功した。

また,トポロジカル欠陥は微小物質を捕捉する性質があるため,直径3ミクロンの粒子を液晶に添加した場合には,トポロジカル欠陥の形状を模倣した3次元的な空間配置が得られることが明らかとなった。更に,2V以下の低い電圧印加によってトポロジカル欠陥は3次元的に形状を変化させ,それに伴って微小物質の空間配置が可逆的に制御できることが明らかとなった。

この研究成果はトポロジカル欠陥の数や形状を制御することを可能とするため,トポロジカル欠陥を活用した新しい液晶の応用が拓けることが期待される。例えば,液晶中に金属のナノ物質を添加し,トポロジカル欠陥によってその配置を制御することができれば,特性可変なメタマテリアルへの応用が期待される。

また,多数のトポロジカル欠陥を網目状に生成することによって,高速な電界応答性から最近注目されるフラストレート相を人工的に誘発できる可能性があるとしている。

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