携帯電話のゲーム事業を手掛けるディー・エヌ・エー(DeNA)は,ADAS(先進運転支援)やロボットのセンサ・システムを手掛けるZMPと,自動運転技術を活用した旅客運送事業の実現に向けた研究・開発などを行なう合弁会社「(株)ロボットタクシー」を5月28日に設立した(ニュースリリース)。
これに伴い,新会社代表取締役社長に就任するDeNA執行役員の中島宏氏と,同じく取締役会長に就任するZMP社長の谷口恒氏が,事業概要について記者会見を開いた。
DeNAは,モバイルゲームをはじめとしたインターネットサービスを通じてノウハウを蓄積してきた。ZMPは,自動車の自動運転技術開発用プラットフォーム RoboCar®シリーズ及びセンサシステムの開発・販売や移動体メーカ(自動車,商用車,建設機械,農業機械,物流搬送機器,屋外作業機械等)向け自動運転技術の開発を行なっており,「Robot of Everything あらゆるものにロボット技術を応用し,安全で,楽しく便利なライフスタイルを創造する」というミッションを掲げ,自動運転技術を様々な産業に展開している。
新会社が目指すのは,ZMPが開発する自動運転車両をDeNAのIT技術によって最適に運行しようというもので,普及が進むタクシー配車アプリの次世代のサービスとなる。大きな目標として,2020年の東京オリンピックまでに多数のロボットタクシーを東京で走らせたいとしている。
ゲーム会社のイメージが強いDeNAがこの事業への参入を決めたは,完成車ベースで11兆円,タクシーだけでも1.7兆円という日本の基幹産業である自動車産業に参入したいという思いあがある。また,「自動車業界でもやっとIT革命がはじまり,エンジンやステアリングといったハードウェアから,ソフトウェアに価値の源泉が移りつつある」(中島氏)ことも,大きな理由の1つだという。一方,ZMPにとっても,世界中で競争が進む自動運転技術の実用化には,IT技術に長けたDeNAとの協業は渡りに船となった。
ZMPの自動運転技術はカメラとレーザセンサを用いており,名古屋でプリウスをベースに改造した試験車両を用いて公道実験を行なっている。現在,警察から許可を受けた約2kmの道路を時速60km程度で自動運転車両を走らせているという。国内の自動車メーカが取り組んでいるのは,あくまでも運転手を支援するための限定的な運転支援技術であるADASだが,ZMPが開発するのは運転手がいなくても走行する完全自動運転システムとなる。
目指す完全自動運転システムの実用化は,技術的な面では数年以内に実用化できると両社は見ている。一方,車両の運用には法規の改正が必須となるが,ここについては行政からもまだスケジュールすら示されておらず,今後も困難な状況が予想される。しかし「いつ急に風向きが変わるかわからない」(中島氏),「(自動運転が)認められないと世界に乗り遅れる」(谷口氏)ことから,2020年にはいつでも事業を開始できる状態を整えたいとしている。