NHK放送技術研究所は,5月28日(木)~31日(日)に同研究所で開催する「技研公開2015」において,新たに開発した8Kディスプレイおよび関連技術を展示する。
直視型パネルでは,オルタステクノロジーと共同で開発した,世界最小となる9.6インチ8K用液晶パネルを発表した(画素密度915dpi)(ニュースリリース)。
オルタステクノロジーが持つ高精細・高透過率液晶技術「HAST技術」と,NHKが保有する超高精細映像に関する信号処理技術の知見とノウハウにより,小型の8K用直視型液晶パネルを実現した。展示では「インテグラル立体テレビ」の要素技術として使用されている。
具体的には,この8Kパネル4枚を透過フィルタとして用い,この映像をレンズ数10万個のレンズアレーに投射することで立体映像を作りだす。これまでは8Kプロジェクタを映像ソースとしてレンズアレイに投射していたが,大型のプロジェクタを複数台並べずとも,このパネルを並べることで,コンパクトに超高精細の映像ソースを作りだすことが可能になった。
NHKはこのパネルを小型汎用モニタなど8K番組制作で活用するほか,立体テレビ用パネルや映像を用いた動く図鑑やカタログなど,8K映像の新たな応用も期待できるとしている。
また,パナソニックはIPS-Pro液晶を用いた55型の8Kディスプレイを出展している。試作ラインで製造したとするが,ニーズがあれば量産化もにらんでいる(同社説明員)といい,いよいよ8Kディスプレイが家庭に入るサイズが実現した。従来の展示に使用されてきた85型と比べて精細度は格段に上がっており,画面に目を近づけても画素を判別することができないレベルになっている。
バックライトはLEDだが色再現性はDCI,AdobeRGBを満足しているといい,スーパーハイビジョン(SHV)の規格となるITU-R勧告 BT.2020についても「緑が少し足りない」レベルにあるとしている。またフレームレートは120Hzを達成しており(展示ソースは60Hz),超高精細と高速動作を両立した。
このサイズになると4Kとの差別化が難しくなると思われるが,説明担当者によると同じ大きさの4Kと並べると「明らかに違いがある」という。同社では家庭用8Kパネルのほか,映像制作などの業務用パネルとしても需要があるのではとしている。
また半導体エネルギー研究所は世界最小となる,13.3インチ8K有機ELパネルを展示する。CAAC-OS(C-Axis Aligned Crystal – Oxide Semiconductor)をバックプレーンに用いており,画素トランジスタ数は497,664,000個。表示方式は白色タンデムOLED+トップエミッション+カラーフィルタとなっている。フレームレートは60Hz。こちらはモバイル向けなどを想定している。
プロジェクタは光源にRGBレーザを用い,フルスペック(BT.2020広色域,フレームレート120Hz,階調12ビット)を満たした「フルスペック8Kプロジェクタ」をJVCケンウッドと開発した(ニュースリリース)。
これまでフレームレート120Hzを実現するためには,いわゆる「画素ずらし」を用いた素子しかなかったが,今回,フレームレート120Hzとフル8Kを両立し,かつ4Kプロジェクタと同サイズとなる1.3インチLCOSを開発した。
ダイナミックレンジは5,000:1,輝度は8,000 lmとなっており,展示では450型のスクリーンを用いて色鮮やかな映像のデモを行なう。また8K映像信号の伝送は,1本のケーブルで144Gb/sの帯域を持つ光伝送インタフェース「U-SDI」を用いている。
このように,SHVのBT.2020広色域を満たすためには光源にレーザのような単波長の光源が必要とされているが,今回NHKは,バックライトの光源にレーザを用いた直視型4K液晶ディスプレイを開発した(ニュースリリース)。
RGBともに半導体レーザを用いた液晶パネル一体型のバックライトモジュールを開発し,液晶パネルのカラーフィルタの分光特性も改善することで,広色域表色系の色域包含率約98%を実現している。なお,この技術については開発パートナーが記されていないが,展示に使用されているのは三菱電機製のモニタとなっている。
関連リンク:NHK技研公開2015