岡山大学病院の共同研究グループは,2011年1月~2012年1月まで合計14症例の左心低形成症候群に対して,標準外科手術+細胞治療群(治療群:7人)と標準外科手術単独群(非治療群:7人)に分けて第1相臨床研究を行なった(ニュースリリース)。
この治療法は,心臓組織約100ミリグラムを採取し,幹細胞を抽出して10日間培養。体重1キロ当たり30万個を冠動脈へカテーテルで注入する。第1相臨床研究では,組織採取1カ月後に幹細胞を移植する治療群と,非治療群に分け,比較を行なった。
その結果,
・安全性・・・細胞移植時における急性虚血や致死的不整脈の惹起作用は認められず,また,移植した細胞によるアレルギー反応や造腫瘍作用も全く認められなかった。
・有効性・・・18ヶ月間にわたる長期追跡調査により,細胞移植を行なった7症例において,外科治療単独群に比べ,心臓の機能が8%以上有意に改善していることがわかった。
研究グループはこの臨床研究によって,細胞治療を受けたグループは,標準外科治療単独群と比較し,心不全の臨床症状が有意に改善し,かつ,心臓手術後も発育不良児が多いこの疾患において,良好な身体発育の促進効果があることが明らかとなったとしている。
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