富士通,対象に情報を付与できるLED照明を開発

富士通研究所は,LEDの光を変調して照明光に情報を埋め込むことで,この照明で照らされた対象物を専用アプリを入れたスマートフォンなどのカメラで撮影するだけで,埋め込んだ情報を取得できる技術を開発した(ニュースリリース)。


展示物にデジタル情報を付与し,端末などによって読み取らせる技術は,電波を用いるNFCタグや2次元コードのQRコードなどがあるが, どちらも対象物に直接貼り付ける必要があるため,利用できる対象が限定される。

また,今回の技術に類似したものとしてLEDを用いた可視光通信があるが,一般的にはLEDのON/OFFを高速で切り替えるために,受信側は専用の装置が必要となる。中にはスマートフォンのカメラで利用できる低速の可視光通信技術もあるが,これはRGBを目に見える速度で点滅を切り替えるため,利用シーンは限られる。

今回開発した技術は,LEDの各色成分を時間方向で制御するというもの。RGBの強度をわずかに変化させることで,人の目にはわからないように光に情報を付与することができる。照明の当たった物体を専用アプリを入れたスマートフォンなどで撮影するだけで,リンク先などの誘導ができる。照明を当てるだけなので,対象を選ばず,美観も損ねることがない。

色を用いて光に情報を付与する技術自体は,同社が2年ほど前に開発したもの。テレビなどディスプレイの映像に情報を埋め込み,スマートフォンなどのカメラを介して情報を送ることに成功している(参考リンク)。今回,この技術を改良して,反射光からも情報を得ることができるようになった。

もちろん,反射光は対象物の色によって異なってくる。特に反射率の低い黒っぽい物体では認識が難しくなるが,わずかな色変化をアプリによって抽出することで,対象物の色を問わず使用が可能になったという。また,照明の色を変化させながら情報を送ることも可能なので,様々なシーンで活躍できるとしている。

現在とのところ通信速度は10b/s程度と遅いが,今後2~3倍程度にはできるとしている。また情報をIDとし,クラウドを通じてWebページなどで大きな情報を提供すれば,情報量の多少はそれほど問題にならない。

同社では,この技術を商品の照明に用いることで商品の情報や決済サービスへ誘導したり,美術館等では展示の解説,またライブを行なう歌手を撮影するだけで歌っている曲をダウンロードできるようにするといった応用を想定している。

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