東工大ら,遺伝子の活性化の仕組みを生きた細胞の蛍光観察により解明

東京工業大学と米国コロラド州立大学らの共同研究グループは,遺伝子の活性化の仕組みを生きた細胞の観察により明らかにした(ニュースリリース)。ヒストンH3アセチル化と転写を行なう活性化型のRNAポリメラーゼIIを同時に生細胞で可視化し,数理モデルと合わせた解析により,ヒストンH3アセチル化が転写因子のDNAへの結合と転写の伸長反応の両方に働くことを突き止めた。

研究グループは,これまで修飾特異的抗体を改変した蛍光プローブを用いて生細胞や生体内でヒストンの翻訳後修飾を計測する方法を開発してきた。今回,その方法を遺伝子の転写を行う蛋白質である活性化型RNAポリメラーゼIIの指標となるリン酸化修飾に適用し,転写の開始と伸長を生細胞で計測することに成功した。転写活性化のモデル系として、ステロイド系ホルモンである糖質コルチコイドで誘導される遺伝子を用いた。

細胞内でDNAと複合体を形成するヒストンたんぱく質の翻訳後修飾は,遺伝子の抑制や活性化に働くと考えられている。中でもヒストンH3のアセチル化は,遺伝子活性化の目印として知られていたが,実際に細胞内でどのように働くのかは分かっていなかった。

研究グループは,今回着目したステロイド系ホルモン誘導性遺伝子について,あらかじめアセチル化されており,ホルモンに応答してすみやかに転写が起こるように準備された状態であると考えている。今後,メチル化などの抑制的な修飾を持つ遺伝子が,発生や分化の過程でどのように活性化するのかを解明していく必要があるとしている。

また最近,がんをはじめとした多くの疾患で,エピジェネティクス調節が異常になることが明らかにされはじめ,ヒストン翻訳後修飾を制御する因子を標的とする薬剤の開発が注目を集めている。今回の研究の知見や計測システムは,今後の薬剤開発にも大いに役立つと期待している。

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