東北大ら,3次元量子ドットによるLEDの作製と発光に成功

東北大学,北海道大学,東京大学らの研究グループは共同で,バイオテンプレート技術と融合して世界で初めて高均一・高密度・無欠陥の6層積層した3次元ガリウム砒素/アルミニウムガリウム砒素量子ドットを作製することに成功した。さらにこの量子ドットを用いてLEDを作製し,電流注入による発光を世界で初めて実現した(ニュースリリース)。

ガリウム砒素などの化合物半導体はシリコンに比べて光の発光効率や吸光効率が極めて高く,特に化合物半導体の量子ドットレーザは,ナノスケールの構造から生じる量子効果によって,より単色化され高強度な光を低消費電力で温度の影響少なく発光できることが期待され,その実用化が精力的に検討されている。

しかしながら,従来の加工法では,微細化に限界があるばかりではなく,脆弱な化合物半導体では激しく欠陥が生成されるため,発光効率が大きく劣化してしまうという問題点があった。また,損傷を回避するために開発された量子ドット作製法では,サイズや密度,位置などの制御が難しく,高効率な発光の実現や発光波長の制御が不可能だった。

研究グループは,鉄などの金属微粒子を内包したたんぱく質が,特殊な処理をした表面に自発的に規則正しく配列した構造を作る性質を用いて,室温にて量子効果を示す厚さ数nm,直径10nm程度のナノピラー構造を,金属微粒子を化合物基板の上に高密度(面密度:1×1011cm-2)に等間隔(20nm間隔)で配置した。

その後,たんぱく質だけを除去して金属微粒子を加工マスクとして中性粒子ビームによる無損傷エッチングを行なうことにより,ナノメートルオーダの欠陥のないガリウム砒素/アルミニウムガリウム砒素が6層に積層した柱状の構造(ピラー構造)が20nm間隔で高密度(6×1011cm-3)に配列した構造を世界で初めて形成した。

さらに,MOVPE装置を使ってアルミニウムガリウム砒素バリア層を再成長させ保護膜を形成(パッシベーション)することで高品質界面の実現に成功し,世界で類をみないトップダウンエッチングで作製した量子ナノディスク構造を内部に持つLED構造の作製に成功した。

このLED構造に,電流を注入することでLED発光させることに成功し,非常に強い発光特性を実現できることも確認した。設計した量子ナノディスク構造の発光波長に対応する760nmから明瞭な発光が確認できた。

研究グループは,この量子ナノピラー構造アレイでは,従来困難であった均一なサイズのナノ構造を数十nm間隔で均一かつ高密度に材料を問わず形成できることから,あらゆる波長帯域を実現できる高効率な量子ドットLEDおよびレーザを実用化できる構造として極めて有望であるとしている。

さらに,中性粒子ビームによる加工・表面改質・材料堆積技術は,現在の半導体業界が直面している革新的ナノデバイスの開発を妨げるプロセス損傷を解決する全く新しいプロセス技術だという。

この技術はもっとも安定した装置において用いられているプラズマ源をそのまま用い,中性化のためのグラファイトグリットを付加するだけで実現できることから,今後,数十nm以下のナノデバイスにおける革新的なプロセスとして実用化されてゆくこともおおいに期待されるものとしている。

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