東芝は,有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率において,1cm角の単層セルで世界最高レベルの11.2%を,5cm角のモジュールで世界最高の9.9%を達成したと発表した(ニュースリリース)。
近年,太陽光発電導入量の大幅な増加に伴い,太陽光の固定買取価格の引き下げも議論されており,太陽光発電コストの低下が強く望まれている。また,現在主流のシリコン系太陽電池は,重量および形状の面から設置場所が限られていた。これらの課題を解決できる技術として,低価格で大量生産が可能,かつ軽量でフレキシブルな特長を持つ有機薄膜太陽電池の実用化が期待されている。
その一方で,有機薄膜太陽電池はエネルギー変換効率が低く,実用化には13%を超える効率が必要とされている。
今回,セル構造として逆構造と呼ばれる安定性に優れる構造を採用し,同社が開発した長波長P型材料の改良品を適用することで,セルのエネルギー変換効率の向上を実現した。また,このセルに膜厚がナノスケールの多層膜を均一かつ高精度にパターン形成できる独自の「メニスカス塗布技術」と,モジュール構造の最適化を可能にするシミュレーション技術を適用した。
これによりフィルファクター(適動作点での出力(最大出力)を,開放電圧と短絡電流の積で割った値で,太陽電池の電流電圧特性の良さを表す指標)が高い,世界最高のエネルギー変換効率のモジュールを開発した。
同社では今後,発電コストをさらに低減するため,変換効率の向上,耐久性の向上および製造コストの低減に向けた研究開発を進めていくとしている。
関連記事「産総研,結晶成長制御により有機薄膜太陽電池の高効率発電層を実現」「三菱化学と大成建設,有機薄膜太陽電池による建物外壁発電の実証実験を開始」「筑波大とNIMS,有機薄膜太陽電池に用いる高純度な高分子材料を簡便に精製する方法を開発」