名大ら,脳動脈瘤手術のシミュレーションツールとして3Dプリンタの有用性を確認

名古屋大学と名古屋共立病院は,脳動脈瘤手術における手術シミュレーションツールの有用性を確認した(プレスリリース)。この手術シミュレーションツールは,脳動脈瘤手術を必要とする患者の脳内の模擬血管を,3次元画像データから3Dプリンタによって再現することで作製した。

脳動脈瘤破裂は,クモ膜下出血といった重篤な疾患につながる病気。この治療法として開頭クリッピング術(瘤付近をクリップする)が行なわれている。しかし,脳の血管は複雑な構造および配置をしており,より安全に手術を行なうためには,患部を正確に再現した模擬血管を作製し,術前に手術の方法を確認,練習した上で,手術を行なう必要がある。

今回,術前に患者の脳動脈瘤3次元画像から,テーラーメイド瘤を作製し,手術前に手技を確認するための手術シミュレーションツールを開発した。樹脂を溶解させて積層するタイプの熱溶解積層方式3Dプリンタを用いて,ABS樹脂製血管モデルを作製。そこにシリコーンゴム原料を塗布して硬化し,雛形のABS樹脂を溶解させることで,シリコーン製の脳動脈瘤モデルができまる。

クリッピング術に使用されるクリップには様々な種類があり,開頭後に医師が症状を判断,選択しなければならない。しかし,テーラーメイド瘤を作製し,事前に検討することで,クリップの種類や治療方法を予め検討した上で,手術の執刀を行なうことができた。

実際の手術所見と比較したところ,この脳動脈瘤モデルは患者の疾患部位と,瘤の形状や大きさ,近傍からの分岐血管などの解剖学的所見が一致し,その有用性が確認された。実際に執刀に当たった医師は,この手法の有用性について,「術前シミュレーションは患者の治療を安全に行なう上で大変役に立った」と述べている。

研究グループは,今回作製した模擬血管について,今後ベンチャー企業(名古屋ラピッドプロダクツ)と連携し,オンデマンドな供給体制を構築することで,平成27年末までに医療機関への本格普及を目指す。