京大,コレステロール調節につながるヒトマイクロRNAをマウスに導入することに成功

京都大学の研究グループは,ヒトにしかないマイクロRNA-33bをマウスに導入することで,これがHDL-Cを下げる働きがあることを初めて見出した(プレスリリース)。

これまでに脂肪酸の合成とコレステロールの合成は,それぞれが特異的な転写因子sterol regulatory element-binding protein (SREBP;ステロール調節配列結合蛋白)-1(脂肪酸合成)とSREBP-2(コレステロール合成)によって促進されることが知られている。

一方,マイクロRNA(miRNA,miR)は22塩基程度の小さなタンパクをコードしないRNAであり,標的メッセンジャーRNAの翻訳に抑制的に作用する。またマイクロRNAは発生や分化の過程のみならず,心血管疾患の発症や進展にも深く関与していることが知られている。

このmiR-33はマウスでは一つ(miR-33a),ヒトでは二つ存在する(miR-33a,miR-33b)。研究グループはこれまでに,miR-33a欠損マウスを作成し,その標的遺伝子であるATP-binding cassette transporter A1 (ABCA1)が上昇し,HDLコレステロールが上昇すること,さらに動脈硬化巣が減少することを示してきまた。しかしながら,これまでにmiR-33bの働きは不明だった。

今回,SREBP-1のイントロンにmiR-33bを入れることによってmiR-33を二つ持つマウス(ヒト化マウス)を作成したところ,HDL-Cの著明な減少を認めた。これは今後,miRNAの制御によるHDL-Cの質の改善と動脈硬化治療法の開発が期待される成果。