東京医科歯科大学の研究グループは,愛媛大学との共同研究で,赤血球からミトコンドリアが除去されるメカニズムを解明した(プレスリリース)。
人間の血液の中を流れている赤血球には,通常の細胞が持っている核やミトコンドリアは存在しない。それは,赤血球が分化する過程で,「核の除去」と「ミトコンドリアの除去」が行なわれているため。
これまで,「核の除去」がどうして起るのかは報告があったが,「ミトコンドリアの除去」がどのように行なわれるかに関しましては良く分かっていなかった。今回の研究は,このメカニズムを明らかにしたもの。
従来,オートファジーは,Atg5と呼ばれる分子を使って行なわれるものと考えられていた。オートファジーとは,古くなった細胞内小器官や蛋白質などを適切に分解する細胞機能。しかし研究グループは,Atg5分子を使わない新しいタイプのオートファジーを発見している。
研究グループは,新しいオートファジーが起きないマウスを作製したところ,赤血球の中にミトコンドリアが大量に残されていることを発見した。同時に,野生型マウスとAtg5欠損マウスの赤血球を観察したが,これらの赤血球では,ミトコンドリアは正常に除かれていた。即ち,赤血球から正常にミトコンドリアが除かれるためには,新しいタイプのオートファジーが重要であることが明らかとなった。
また、赤血球からのミトコンドリア除去が行なわれないと,赤血球が脆弱となり,貧血になることも併せて見出した。
今回の研究成果により,赤血球からミトコンドリアが除かれるメカニズムが明らかとなった。赤血球が成熟化する基本原理を知ることにより,貧血などの血液疾患の病態解析や治療に応用できる可能性がある。