理研ら,低環境負荷熱媒体を用いた排熱回収発電システムの稼働に成功

理化学研究所(理研)は,米国ハネウエル社が開発した代替フロンに代わる新素材「HFO1233zd」を作動媒体(熱媒体)としたランキン・サイクル(低温の排熱を回収し,電力化するシステム)の稼働試験を,㈱ダ・ビンチと共同で行ない,作動を確認するとともに,ランキン・サイクル内での熱回収率を30%程度まで引き上げることに成功した。

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この際,熱を電力に変換する熱仕事効率は低く,低温領域で作動するロータリー熱エンジンでは5.3%程度となっている。しかし,サイクル内で熱を再利用することにより,投入熱量を減少して,ランキン・サイクルの熱仕事効率を7.57%程度に高めることができる。その際,発電システムが採用する熱媒体などの環境負荷を小さくし,100度以下の低温廃棄熱を有効利用することが最重要課題になっている。

研究チームでは,ダ・ビンチが開発した小型の膨張機(RHEバンケル型エンジン)をランキン・サイクルに搭載し,低圧でも作動可能なシステムとすることで,低温熱源から得た低圧の蒸気(熱媒体)でも発電可能なシステムを開発した。

今回使用した熱媒体「HFO1233zd」は,ランキン・サイクルの作動媒体として広く使われ,また電気事業法の小型バイナリー発電の規制緩和に対応している代替フロン「HFC245fa」と比べ,環境負荷が1/1,000程度で,地球温暖化係数(GWP)は二酸化炭素と同等の1であることから,環境負荷を抑えたランキン・サイクルの主要な作動媒体として期待されている。

今回の実験では,ランキン・サイクルとともに,潜熱回生熱交換器の性能試験を行なった。これは,仕事に変換されなかったサイクル内の蒸気の潜熱を回収し,サイクル内に再投入する機器で,システム全体の熱仕事効率を大きく向上する。特にランキン・サイクルの経路上では,膨張器の排気時に生じる背圧(損失)の有効利用によって,大幅な熱回収が可能となると想定される。

実験の結果,サイクル内熱回収率は30%程度まで向上することができた。今後,RHEバンケル型エンジンと潜熱回生熱交換器の組み合わせを最適化していくことで,熱回収効率を50%程度まで引き上げられると考えている。その場合,熱仕事効率は10.6%程度となる。

詳しくは理化学研究所 プレスリリースへ。