東大、水中に入れても膨張も形崩れもしない高強度のハイドロゲルを世界で初めて開発

東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻 酒井・鄭研究室助教の酒井崇匡氏らは、生体環境下で収縮する特殊な高分子を、任意の割合でハイドロゲルに導入することで、水分を吸収して膨張しようとするハイドロゲルの変形を制御することに世界で初めて成功した。

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近年、再生医療への関心が高まる中、医用材料としてのハイドロゲルに注目が集まっている。日常生活で目にするハイドロゲルは豆腐・寒天・煮こごり等の食べ物が主だが、コンタクトレンズやオムツなど、医療や衛生分野で用いられているものも多くある。

ハイドロゲルは、高い含水率(~90%)を有し、生体軟組織に類似した組成を持つことから、生体に優しい医用材料の有力な候補として挙げられている。しかしながら、生体内では、ハイドロゲルは体内の水分を吸収し、膨張してしまうために、元の形状を維持できないばかりか、その力学特性も大きく損なわれてしまうという問題があった。

研究グループは、水に溶け、生体温度(37˚C)では収縮状態となる特殊な高分子を、ハイドロゲルの一部として組み込むことに成功した。開発したハイドロゲル(非膨潤ハイドロゲル)では、従来のハイドロゲルと同様に膨潤しようとする部分と、生体温度で収縮しようとする部分が相反するため、ある一定の割合でハイドロゲルが構成されているときに、見かけの形状変化を相殺することができる。そこで、実際に高分子を混合する割合を詳細に検討することで、生体環境で膨潤が抑制される比率を見出し、世界で初めて膨潤の精密な制御に成功した。

このハイドロゲルは、特殊な高分子を含む二種類の水溶液を混ぜるだけで誰でも簡単に作製することができ、生体内においても膨張することなく水分を吸収する前の初期の形状を維持し、かつ高い強度を有することから、人工軟骨や人工椎間板としての応用や、再生医療/組織工学における細胞(iPS細胞やSTAP細胞など)の足場素材として利用されると期待される。

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