産総研,高性能鉛フリー圧電セラミックスを開発

産業技術総合研究所(産総研)は,人体や環境に有害な鉛を含まない高性能な圧電セラミックス(鉛フリー圧電セラミックス)を開発した。

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圧電材料は機械的エネルギーと電気的エネルギーを相互変換できる材料であり,センサやアクチュエータとして用いられる。こうした圧電材料は主成分として鉛を含んだ圧電セラミックス材料Pb(Zr,Ti)O3(PZT)であり,人体や環境に対する負荷が大きい。

鉛系圧電セラミックスでは,正方晶―菱面体晶相境界付近の組成を持つ材料で圧電特性が向上することが知られている。産総研では,2001年から鉛を含まないペロブスカイト酸化物であるニオブ酸ナトリウム・カリウムを対象に,正方晶―菱面体晶相境界付近の組成を持つ高性能な鉛フリー圧電材料の開発に取り組んできた。

今回開発した鉛フリー圧電セラミックスの結晶構造は,正方晶から菱面体晶へと連続的に制御可能。正方晶―菱面体晶相境界付近の組成で圧電特性を最適化することにより,高いキュリー温度tc(240 ℃)と高い圧電定数d33(420 pC/N)を同時に得ることに成功した。これらの圧電特性は,既存の電子デバイスへ組み込まれている鉛系圧電セラミックスPZTに匹敵する。

電子情報技術産業協会(JEITA)の規格に従いこの鉛フリー圧電セラミックスの圧電特性を評価したところ,従来の鉛系圧電材料に匹敵する高性能を示した。また,圧電特性の評価結果に基づき設計・試作したアコースティック・エミッション(AE)センサや超音波距離センサ(水中用,空気中用)は,鉛系圧電材料を用いたセンサと同程度の性能を示し,鉛を含まない圧電センサの実用化への可能性が示された。

今回開発した鉛フリー圧電セラミックスは,今後の安心・安全な圧電センサとしての利用が期待される。産総研では,鉛フリー圧電セラミックスを組み込んだ電子デバイスの実用化に向けた共同研究先を模索するとしている。

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