東大、銀ナノシートを有する層状化合物において超高電子移動度を実現

最先端研究開発支援プログラム(FIRST)課題名「強相関量子科学」の事業の一環として、東京大学大学院工学系研究科准教授の石渡晋太郎氏と理化学研究所創発物性科学研究センターセンター長の十倉好紀氏らの研究グループは、層状化合物β-CuAgSeが、室温程度の熱を効率的に電気エネルギーに変換する熱電変換素子の材料として有望であることを発見した。

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熱電変換素子は、廃熱を再利用できる発電機としてだけでなく、冷凍機(ペルチエ式クーラー)としての機能をもたせることができる。ペルチエ式クーラーは小型化できるなど様々な特徴を備えているが、その冷却能力はコンプレッサー式には遠く及ばず、低温でより高い性能をもつ新しい熱電材料の開発が望まれていた。

本研究では、銀のナノシートを有する層状化合物β-CuAgSeに化学置換を行なうことで、室温から-200℃までの低温領域でビスマス系化合物に匹敵する高い熱電性能を示すことを見いだした。また、輸送特性や第一原理計算から、銀ナノシートを流れる電子が極めて高い移動度をもっており、このことが高い熱電性能をもたらす主たる要因であることを突き止めた。これらの成果は、より高性能なペルチエ式クーラーのための熱電材料の開発に、新たな設計指針をもたらすものと期待される。

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