回折光学素子（回折レンズ）は、文字通り回折現象を利用した光学素子であるが、従来からよく知られた屈折型のレンズとは異なる特徴を持っている。その原理的なアイデアは比較的古くから知られていたが、近年、微細加工技術の急速な発展や、新材料の開発、理論面での整備が進み、光ディスクをはじめとして、カメラ、顕微鏡、眼内レンズな
幅広い分野で応用が進んでいる。これらの発展には、回折光学素子に特徴的な機能の中で、従来の屈折系のレンズ技術の延長上に捉えることによって理論上の位置づけや設計上の指針を明確にしてきたことによる貢献も大きいと考えられる。
本講座ではこのように発展してきたこの分野の基礎を今一度振り返り、最新の理論や技術、応用トピックスを紹介しつつ、今後の応用に役立たせて頂こうと企画したものである。特に回折光学素子の収差論での取り扱い、顕微鏡や眼内レンズへの応用の項目には新しい内容が含まれている。回折光学素子にあまり馴染みのない方の基礎学習にも、設計、開発の経験のある方の新しい内容の習得にも役立つ内容となっている。光学、レンズ設計・開発に携わる多くの技術者の受講をお勧めしたい。