月刊OPTRONICS 特集序文公開

1 kJ 級高輝度パルスに向けたLD 励起固体レーザー技術

1.はじめに

レーザー核融合発電という言葉を新聞・雑誌の記事やテレビのニュースで度々聞くようになっており,わずか2 ~ 3年前と比べても,レーザー核融合発電への期待と注目度の高まりを筆者は実感している。これは,レーザー核融合エネルギーの点火燃焼の実証を目指し2009年に完成した米国の国立点火施設(NIF:National IgnitionFacility)において,2022 年12月にターゲットへ照射した紫外レーザー光よりも核融合出力が上回る科学的ブレークイーブンが達成されたことが大きく影響している。このNIFの成果は,レーザー核融合発電の実現可能性を科学的な側面から示した大きな一歩であった。これにより,世界的なカーボンニュートラルの潮流の中で,磁場閉じ込め方式と並んでレーザー方式による発電炉の実現に向けた工学的な開発研究がこれまで以上に重要となってきた。特に発電炉ドライバーとなるメガジュール級レーザーの実現の見通しを立てることは最重要課題であり,その進展がレーザー核融合発電炉の将来を左右すると言っても過言ではない。

NIFを構成するフラッシュランプ励起Nd: ガラス固体レーザーは,レーザー媒質を冷却するのに時間を要するために1日に数回しかレーザー光を出力することができないことと,励起源であるフラッシュランプの点灯に必要となる電気エネルギーからレーザーの光エネルギーへの変換効率が低いことから,繰り返し動作と高い電気効率が求められるレーザー核融合発電炉にそのままの技術を転用することができない。そこで固体レーザーの励起源としてフラッシュランプの代わりに半導体レーザー(LD:Laser diode)を用いるLD励起固体レーザーの研究開発が1990年代から日米欧で進められ,浜松ホトニクスも大阪大学と連携して30 年以上に亘り取り組んできた。

現在,世界でレーザー核融合発電に注目が集まっている中で,日本は世界トップレベルの研究成果の蓄積と最先端の大出力レーザー技術を有するに至っている。そこで本稿では,浜松ホトニクスにおけるこれまでの大出力LD励起固体レーザー技術の開発の経緯を振り返りつつ,最新の大出力LD励起固体レーザー技術の状況と今後の1~10kJ級レーザーへの大出力化に向けた取り組みを紹介する。

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