1.はじめに
窒化ガリウム(GaN)系材料を用いた青色で発振する半導体レーザーは,光ディスクメディア用やプロジェクタ用の光源として,商業的に応用展開されてきた。レーザー光の出力や効率の向上に伴い,最近では,輝度が要求されるレーザー加工,車載用照明,水中通信・センシング,自由空間通信といった応用への展開が望まれている。しかしながら,従来のファブリペロー型半導体レーザーは高出力化には成功しているものの,輝度に関しては原理上限界がある。すなわち,高出力化のために電極幅(リッジ幅)を広げると,それに伴い,横モードが多モード化し,ビーム品質が低下するという本質的な課題を抱えている。ビーム品質の低下は,輝度の低下を意味し,前述の応用展開が困難となる。また,従来のファブリペロー型半導体レーザーの出射されるビームは楕円状に大きく拡がり,そのビームを成形するために光学系を要し,光学ユニットが複雑化するという課題もある。
そこで最近,前述の課題を解決するデバイスの有望な候補として,フォトニック結晶面発光レーザー(Photonic-Crystal Surface-Emitting Laser,以下PCSEL)に関心が寄せられている。PCSELは新規の半導体レーザーで,活性層付近に共振器となる2次元フォトニック結晶が配置されている。2次元フォトニック結晶の共振効果により原理的に発振面積を大面積化してもコヒーレントに動作することが最大の特徴である。900 nm帯域のGaAs 系PCSELにおいては,出力50 W,輝度1 GW cm–2 sr–1のレーザー動作の実証が報告されている。可視光帯域で動作するGaN系PCSELにおいては,2008年に青紫波長帯域で初期的な動作が報告されたが閾値電流や出力に課題があった。われわれのグループは,初期のデバイスに対して解決策を講じ,青色波長帯域におけるワット級高出力動作に関して報告した。また,最近では緑色波長帯域でのレーザー動作に関しても報告がされており,GaN系PCSELの発展がうかがえる。本稿では,青色波長帯域で動作するGaN系PCSELの開発状況について報告する。
【月刊OPTRONICS掲載記事】続きを読みたい方は下記のリンクより月刊誌をご購入ください。
本号の購入はこちら