月刊OPTRONICS 特集序文公開

シリコンメタサーフェスにおける熱光学効果と2次元ナノ材料とのハイブリッド化

1.はじめに

メタサーフェス(metasurface)は2 次元のメタマテリアルであり,メタ原子(meta-atom)とよばれる光の共振器を基板表面に配列したものである。メタサーフェスの研究は2000 年代後半~ 2010 年代前半にかけては金属を用いたプラズモニックメタサーフェスが主流であった。2010年代中盤になると透過型メタサーフェスの損失低減の必要性から,金属を用いない誘電体メタサーフェス(all-dielectric metasurface)が誕生した。これによりメタレンズやメタホログラムなどの光の波長λ0以下の極薄の透過型平面型光学素子が実現された。この分野は実用化にむけて急速な進展を続けており,メタオプティクス(Meta-Optics)とよばれている。

メタオプティクスはメタ原子の位相制御の方式により大きく分けて,1)伝搬位相,2)共振位相,3)幾何学的位相,の3 つのタイプに分類できる。本稿ではメタ原子をミー共振器(Mie resonator)とみて,ミー共振のモードを制御するタイプ2)のメタサーフェスについて紹介する。この方式はミートロニクス(Mie-tronics)ともよばれ,ミー共振により光学スペクトル,偏光特性や指向性を制御するものである。

これまでメタオプティクスの研究は受動光学素子を中心に行われてきた。現在,時間的に光学特性が変化する動的メタサーフェスの研究が精力的にすすめられ,様々な方式の動的光制御が実証されるようになった。しかし,その多くは液晶やMEMSへの電圧印加による電気的変調方式が主流であり,動作周波数はそれぞれHz,kHzのオーダーにとどまっている。将来,フォトニクスの超高速性・低消費電力性を最大限に生かすためには,光により光を制御(全光制御)できるメタサーフェスが必要と考えられる。しかし,メタサーフェスは厚さがλ0 以下の縦型素子であり,光との相互作用長が短い点が原理的な問題となる。我々はメタサーフェスの全光制御に適した方法として熱光学効果(photothermal effect)および2 次元ナノ材料とのハイブリッド化という2 つのアプローチで研究を行っている。

本稿ではシリコンメタサーフェスの熱光学効果を用いた全光制御の現状について我々の研究を中心に述べる。さらに,グラフェンとシリコンメタサーフェスのハイブリッド化による高機能化の試みについて紹介する。

【月刊OPTRONICS掲載記事】続きを読みたい方は下記のリンクより月刊誌をご購入ください。

本号の購入はこちら