月刊OPTRONICS 特集序文公開

大容量化に向けた超広帯域光伝送技術

1.はじめに
ファイバ1 心当たりの容量を拡大するためには,マルチバンド伝送技術や空間分割多重(SDM:spacedivisionmultiplexing)技術によって,送受信に使用する光信号の総帯域を拡大する超広帯域光伝送技術が求められる。既存のC+Lバンド伝送システムからO, E, S,Uバンドといった新たなバンドへ信号帯域が拡張されるマルチバンド伝送では,ファイバ中の伝送損失や光増幅器及び光送受信器の高性能化が課題ではあるものの,広く敷設されている標準シングルモードファイバ(SMF:single-mode fiber)が利用可能である。一方,SDMシステムでは,既存のC+Lバンドを基本として,空間軸方向に均等にスケールアウトできるため,マルチバンド伝送システムと比べて各SDMチャネルで同等の伝送性能が得られやすい反面,実用化に向けては新たにSDM光ケーブルの敷設が必要である。近年では,既存C+Lバンドを波長軸や空間軸に拡張したマルチバンド及びSDM大容量波長多重(WDM:wavelength-division multiplexing)伝送実験が多数報告されている。

図1 に標準外径ファイバを用いたC+Lバンドを含むマルチバンド及びSDM大容量WDM伝送実験における総光信号帯域とバンド数×空間多重数の関係を示す。なお,SDM技術の中でも従来の送受信器を適用可能な弱結合型マルチコアファイバ(MCF:multi-core fiber)のみをプロットした。これまで,標準SMFを用いた,S+C+Lバンドを用いた3 バンドWDM伝送実験やC+L+Uバンドを用いた3 バンドWDM伝送実験やE+S+C+Lバンドを用いた4 バンドWDM伝送実験,O+S+C+L+Uバンドを用いた5 バンドWDM伝送実験,37 THzを超える総信号帯域を持つO+E+S+C+L+Uバンドを用いた6 バンドWDM伝送実験が報告されている。また,SDM技術として,従来のケーブル構造や送受信器が適用可能である標準外径の弱結合型MCFを用いて,C+LバンドやS+C+L バンドに渡った4 コアファイバ(4CF:4-corefiber)WDM伝送実験が報告されている。なお,バンドごとに定義されている周波数帯域幅が異なることから,図1 に示す総光信号帯域とバンド数×空間多重数は単純な比例関係とはならないことに注意が必要である。本稿では,我々の超広帯域光伝送技術の取り組みとして,より商用環境に近い敷設光ファイバケーブルを用いたマルチバンド伝送実験及びSDM伝送実験を紹介する。敷設SMFを用いてO+S+C+L+Uバンドに渡ったマルチバンド伝送実験を行うことで,45 kmの伝送距離において25 THzを超える帯域と100 Tb/s を超える伝送容量が達成できることを明らかにする。さらに,敷設された標準外径の弱結合型4CFを用いて,C+LバンドのSDM伝送実験を行うことで,2,000 kmを超える伝送距離と100Tb/s を超える伝送容量が達成可能であることを示す。

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