オムニビジョン,車載向け裏面照射HDR CMOSセンサを発表

米OmniVision Technologies, Inc.の日本法人であるオムニビジョン・テクノロジーズ・ジャパンは,自動車向けとしては初となる裏面照射(BSI)技術を採用したCMOSイメージセンサ「OV10640」と,専用コンパニオンプロセッサ「OV10640」を発表した。2014年6月にサンプル出荷を開始し,同年第4四半期に量産に移る。

OV10640

「OV10640」はドライバー・アシスタンス・システム(ADAS)向けに開発された1/3インチのCMOSセンサ(パッケージサイズ 7.4×7.2mm)で,120dBのハイダイナミックレンジ(HDR)と130万画素の解像度を有し,毎秒60フレームのRAWデータを出力する。感度は同社現行のHDRセンサ「OV10635」の3.65V/Lux-secの2倍以上になるとしている。動作保障温度は-40~+105℃。

通常HDR映像は,画面の明るい部分と暗い部分にそれぞれ露出を合わせた,2枚以上の写真を合成することで実現するが,この方式の場合,各写真を順番に撮影するために被写体が移動すると合成した写真にブレが生じることがある。特に高速で走行する自動車では,ADASで用いる画像認識データとして適さない場面も予想される。

今回発表した「OV10640」では,こうした時間差を抑える技術を用いており「同時に2枚の画像を取得する」(同社シニアFAE福田英寿氏)ことができるという。技術の詳細については公表できないとしているが,常に同時の画像が取得できるのかについては「一定の明暗差を超えると時間差が発生するもこともあるが,一般的な使用条件では問題ない」(福田氏)という。

発表会場では,室内照明環境下と低照度環境下におけるセンサの撮影状態を示すデモも行なわれた。下の写真上段は室内照明環境下のもので,左のモニタより同社製高感度センサ,新製品,現行型HDRセンサとなっている。高感度カメラでは白飛びしてしまっている電球内のフィラメントの形が,新製品と現行型HDRセンサでは確認することができる。

一方,低照度環境下(下段)においては明暗差が大きすぎるため,現行型HDRセンサでも電球は白飛びしてしまうが,新製品ではまだフィラメントの形がはっきり残っているのが分かる。さらに下のデモ動画でも,暗所から外光にある車や逆光下での歩行者を判別したり,夜間に信号と他車のヘッドライトの色を見分けることができている。

この新製品の用途は,フロントカメラとして前方のセンシングに限定するものではなく,リアカメラやサイドカメラとして全周囲監視,車線逸脱警報(LDW),歩行者検出など,ADASで求められる様々なアプリケーションに対応するとしている。

同社は2013年に約14億ドルを売り上げているが,このうち50%程度をスマートフォンやタブレットのカメラが占めている。自動車向けは10%程度で,これは業界シェア20%程度だとしている。同社では今後,自動車向けイメージセンサ・カメラ市場は大きく伸びると見ており,2014年で5,500万台だった市場は,2020年には1億7,000万台になると予測。重要なマーケットとして力を入れていく。