東北大,全球凍結の地層に光合成生物の痕跡を発見

東北大学の研究グループは,6億5〜3千万年前の全球凍結―解氷時に形成されたこれらの地層の岩石試料を分析し,全球凍結中にも光合成生物(藻類)が存在した証拠,及び,解氷後に生物量極小を経て真正細菌が増え,その後,真核生物が栄えた証拠を得た(ニュースリリース)。

地球は,その46億年の歴史において氷床がある時期(氷室期)と氷床がない時期(温室期)を繰り返してきた。その中で,まれに,地球全体が氷に覆われる「全球凍結」が起きたことが分かっている。この全球凍結は,24億年前と7〜6億年前に起こり,後者の凍結は2回起きている。

氷室期に発達する大陸氷河は,移動に伴って岩盤を削り込み,底面に石(礫)を取り込む。氷河の先端が海洋に達すると,底面の石は海底の泥に落ち,石を含む泥岩が形成される。これが当時低緯度だった場所の地層から発見されると,それが全球凍結の証拠となる。

陸から遠ざかるほど堆積物の粒子は細かくなるので,普通は,礫は遠洋の堆積物には含まれないが,氷山が運ぶ場合には,遠洋の堆積物にも礫が含まれることになる。河川の堆積物は砂の中に礫が入るが,氷山が礫を海へ運ぶ場合は,氷が陸から遠く離れてから礫を落とすので泥に礫が含まれる。

研究グループは,2011年に中国の三峡ダム付近の6億5千万年前から5億4千万年前の地層を調査し,岩石試料を採取した。2015年以降,6億5〜3千万年前の岩石試料中の堆積有機分子を分析し,光合成生物・真正細菌・真核生物に特徴的な堆積有機分子の量比を算出した。

その結果,全球凍結中にも光合成生物(藻類)が存在した証拠,及び,解氷後に生物量極小を経て真正細菌が増え,その後,真核生物が栄えた証拠を得た。これらの証拠から,解氷時の異常に高い気温で生物量極小化し,気温が下がる途中で真正細菌が増え,気温が普通の状態になると真核生物が増えたと解釈できるという。

研究で扱った時代は,左右相称動物の大進化時代(カンブリア爆発)の一つ前の時代で,まさに動物の進化の時代となる。その進化と全球凍結の関係は未解明だが,研究グループは,この成果が全球凍結と動物の進化の関係を解明する重要な鍵になるかもしれないとしている。

研究グループは,同じ時代の別の国で採取した試料の分析結果を公表する予定。動物進化には酸素量が関係していると考えられており,大気酸素―海中酸素―動物の進化を考察した研究成果を公表するとしている。

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