電通大,生体組織越しのイメージング手法を開発

電気通信大学の研究グループは,In-line型位相シフトデジタルホログラフィを応用して生体組織越しのイメージング手法を開発した(ニュースリリース)。

生体皮膚やすりガラスのような散乱媒体越しに物を見る技術は,医療分野において注目されている。現在まで多くの手法が提案されてきたが,その中の手法の1つとして散乱媒体をスクリーンのように見立て,観察対象の情報を記録するデジタルホログラフィを利用した手法が知られている。

しかし,従来のOff-axis型では再生像の解像度において重要になる記録可能な空間周波数帯域の制限や散乱媒体を回転させることが必要であり,顕微イメージングが困難だった。

今回,研究グループは,従来のOff-axis型の光学系をIn-line型へ組み変え,位相シフト法を用いることで顕微イメージングへの課題を打破した。

物体に照射された光と基準の光を干渉させることで,物体のもつ3次元情報を2次元情報として干渉縞に閉じ込める。この散乱媒体上に映し出された干渉縞は直接見ると散乱されてノイズ状になってしまうが,レンズと撮像素子の簡易な光学系を組み合わせることで干渉縞を記録できる。

計算機上では簡易な画像処理と光の伝搬計算によって物体を再構成するため,散乱の強さといった散乱媒体の情報を必要とせずに再構成が可能となる。

散乱媒体にすりガラスを用いた基礎実験ではすりガラス越しに1.81µmの微小物体の可視化に成功した。さらに直径101µmのプラスチックビーズの定量位相情報を正確に取得し,3次元的に配置された物体も計算機上で確認することができた。

すりガラス以外の散乱媒体として厚み0.652mmのラットの皮膚を用いた。生体組織には細胞や血管が混在し,多数の散乱層を有しているためにすりガラス越しのイメージングよりも難しい。

しかし,伝搬計算する前の画像からは物体のラインは全く見えないが,多数の散乱層を有する生体組織越しでも光の伝搬計算によって明瞭な幅2.0µmの物体が確認できた。これにより皮膚で覆われた細胞や血管,筋肉の微細構造を摘出せずにイメージングできる可能性を示した。

この研究では,In-line型位相シフトデジタルホログラフィを利用して生体組織背後に置かれた2.0µmの微小物体を確認できる手法の開発に成功した。またこれらの光学系を小型にすることで生体内の細胞を摘出することなくイメージングできる可能性があるとしている。

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