玉川大学の研究グループは,Y-00光通信量子暗号のための光の変調(電気-光変換)方法を新たに提案し,電気デジタル・アナログ変換デバイスの限界を打破する,極めて多くの光強度をもつ暗号を発生させる実証実験に成功した(ニュースリリース)。
Y-00光通信量子暗号では,暗号鍵を用いて,データ信号(平文)を多くの異なる光強度に変換することで暗号化を行なう。隣接する光強度が近づくと受信時の光-電気変換で生じる量子雑音の影響で,鍵をもたない盗聴者は正確な平文を復元することができない。
この秘匿効果は,隣接する光強度をどれだけ近づけることができるか,つまり,いかに多くの異なる光強度を作り出すことができるかに依存している。これまでは,その数が電気デジタル・アナログ変換デバイスの性能で制限されてきた。
今回,複数の電気デジタル・アナログ変換デバイスの出力を光の領域で多重化して光強度に変調する方法を提案した。これにより電気デジタル・アナログ変換デバイスの性能に依存しないY-00光通信量子暗号の発生が可能となる。
実証実験では,214(=16,384)という「極めて」多くの異なる光強度にて,10Gb/sの高速データ信号を暗号化することに成功した。単一のデジタル・アナログ変換デバイスで発生できる光強度の数は210(=1,024)程度であり,提案方法の導入でこの限界を大きく超える光強度の数を実証した。この成果は,量子雑音の効果に基づく安全性を高速の通信で実現できることを示すものだとしている。