名古屋大学の研究グループは,世界で最も大きいサイズの孔を持つ液晶性環状分子の開発に成功し,液体の中にナノサイズの空間を形成することに成功した(ニュースリリース)。
活性炭やゼオライト等で知られる多孔性固体は,細孔の中に取り込んだ分子のみを反応する反応場として注目されている。しかし,分子サイズの空間を液体の中に作り出す方法論はほとんどなかった。
研究グループは,コインを重ねるように円盤状の形を持つ分子が集まってできる液晶(カラムナー液晶)に着目。円盤状分子の代わりに,内側に分子を取り込むサイズの「孔」をもつ環状分子を重ねることで,筒状構造の内側にナノサイズの空間を持つ液体ができると着想した。
液体に分子を溶かすことと異なり,分子を液体状の箱に入れることができ,未踏の反応を行う特殊な空間などへの展開が期待できる。これまで1nm程度のサイズの孔を持つ環状分子の液晶化に成功していたが,研究では従来までのサイズを大きく上回る2.5nmの直径サイズをもつ巨大環状分子を合成し,その液晶化に成功した。
このサイズはタンパク質を取り込めるほどの大きさ。タンパク質などの生理活性物質や,機能性炭素材料であるC60(フラーレン)などの大きな分子を取り込むことにより,触媒材料,有機薄膜太陽電池,導電性インク材料などへの応用が期待されるとしている。