東芝は，独自の塗布印刷技術を用いて，樹脂フィルム基板上に作製した5cm×5cmのペロブスカイト太陽電池モジュールで，世界最高のエネルギー変換効率10.5%を達成した（ニュースリリース）。
フィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールは，従来は均一で大面積なペロブスカイト多結晶膜の形成が難しく，また，モジュール作製に必要なスクライブ工程では，フィルム基板が柔らかく刃圧を強くすることができないため，電極上の膜を十分に除去できず，結果的にセル間の抵抗が高くなり変換効率が下がる問題があった。
研究ではPENのような樹脂フィルムを基板として用いることから，セル構造として150℃以下の温度で作製可能なプレーナ型逆構造を採用。大面積化の課題に対しては有機薄膜太陽電池の研究開発で培ったメニスカス塗布印刷技術でCH3NH3PbI3ペロブスカイト多結晶膜の均一成膜に成功し，セルごとの特性ばらつきを低減させてモジュールとしての効率を向上させた。
また，モジュール作製のスクライブプロセスでは，刃圧の最適化と，弱い刃圧でも電極上の膜が良好に除去できる材料の組み合わせにより，ガラス基板を用いた場合と同等なレベルにセル間抵抗を減少させ，変換効率を向上させた。樹脂基板向けに開発したITO透明電極のシート抵抗低減も高効率化に寄与しているという。
今回，変換効率が10%を超え，フィルム型モジュールの高効率化，大面積化のポテンシャルを示すことができた。今後は，ペロブスカイト材料の組成変更やプロセス改善等により，モジュールサイズの拡大と変換効率向上を進めていくとしている。
フィルム型太陽電池は多様な設置形態で太陽電池の普及を促進し，ペロブスカイト太陽電池の高効率化と低コスト製造技術は発電コストの低減に繋がる。同社は，結晶シリコン太陽電池に匹敵する効率，および基幹電源並みの発電コスト7円／kWhの実現を目指して，研究開発を進めていくとしている。
