三菱重工グループの三菱重工工作機械は,同社の高速・高精度な精密加工性能を持つ微細レーザー加工機「ABLASER(アブレーザー)」を,レーザー加工技術で先行する欧米市場で広くアピールするとともに,半導体製造プロセスにおける新たな微細加工ソリューションをアジア市場で提案し,拡販につなげると発表した(ニュースリリース)。
これは,同社のレーザー加工機事業の製品第一弾として開発した「ABLASER」の初号機を,国内大手精密機器メーカーに納入したのを弾みとするもの。このメーカーでは,主に高硬度材料や脆性材料の精密加工にこの加工機を活用しており,切削加工で困難な脆性材料の微細高精度加工を実現し,エッチングでは必須の前後処理工程が不要になるなどランニングコストの低減効果も合わせて,今後の新製品開発への貢献を期待しているという。
この製品は,微細で高品質な加工面が得られるパルス幅の短い短パルスレーザー光を,精密なレンズやプリズムなどを組み合わせ,精密工作機械のノウハウを用い自由に屈折させたり回転させたりする独自の精密光学ヘッドにより,普及の課題となっていた形状精度を高めることに成功した。
高いピーク出力で加工部分をアブレーションさせることで,加工面への熱影響を抑えることができ,穴あけ加工においては放電加工や従来のレーザー加工を上回る寸法精度と表面の滑らかさを確保。円錐状穴や鼓状穴といった難しい加工も可能だとする。
今回,ABLASERが実際の製造現場に導入され,加工の品質の高さとその安定性を実証していることを強みとして,国内での営業活動に加え,欧州および北米市場を中心に,さまざまな加工現場に対する提案型の営業を強化していく。
製品において微細化の進展が今後予測される自動車,MEMS,半導体,医療分野に向けて本技術を活用した微細加工ソリューションを欧米の企業や研究機関などに紹介し,微細高精度加工に対するニーズを掘り起こしていく。
さらに,同社の独自製品である,大口径のシリコンウエハーを効率的に積層できる全自動常温ウエハー接合装置,炭化ケイ素などの難削ウエハー材も容易に加工できる小型精密加工機などとABLASERを組み合わせた新しい半導体製造プロセスを関連業界に提案し,半導体の生産基地となっている中国や韓国,台湾への販売を強化していくとしている。