オムロン,樹脂に直接回路を形成する技術を開発

オムロンは,各種の電子部品を樹脂製成形品に埋設しインクジェット印刷で接合することで電子回路を形成する技術を世界で初めて開発した(ニュースリリース)。

この技術は,電子部品を樹脂製成形品の定位置に誤差±50μm以内の精度で挿入し,電子部品の電極部を樹脂の表面に露出させた上で,回路パターンを樹脂の表面にインクジェット印刷で塗布し電子回路を形成する製造技術。

従来の電子機器に不可欠とされてきた平面状のプリント基板が不要なため,曲面や立体面上での電子回路の形成が可能。電子部品をプリント基板にハンダ付けする工程もなくなるため,電子部品の耐熱対策が不要となり,電子部品そのものの小型化と高密度実装に貢献する。

また,プリント基板の製造工程における洗浄水の消費やハンダ付けのための熱処理工程が不要となり,環境負荷を低減する。さらに,製造に用いる加工装置が3種類のみと少ないため,多品種少量生産や需要変動に応じた柔軟な生産に適しているという。

今回,溶融した樹脂材の流動に耐える電子部品の固定工法を新たに開発し,樹脂製成形品の射出成形時に挿入する電子部品の位置ズレを±50μm以内に抑えた。0201(0.2mm,0.1mm)サイズのチップコンデンサ,チップ抵抗,IC,センサー,LED,LCD,金属端子を含む電子部品を,ABS樹脂,ポリカーボネート等の汎用の樹脂製成形品へ埋設できる。成形品の表面に直接回路を形成する従来の技術で必要となっていた耐熱性のある特殊な樹脂材は必要ない。

通常,インクジェット印刷に用いられるインクは,樹脂,金属,ガラス等に塗布すると,はじいたり,あるいは濡れ広がったりすることで回路パターンを描画することができなかった。今回,液体が浸透しない材質へもインクを塗布できる技術を新たに開発した。

曲面,1mm程度の段差,立体面等へも回路パターンを印刷できるため,従来では実現できなかった立体的な電子回路の形成が可能。プリント基板上に電子部品を実装しハンダで接合する工程がないため,電子部品の高耐熱化対策が不要となり,電子部品のさらなる小型化,高密度実装化が期待できるという。

従来の製造工程で必要としていたプリント基板加工,リフロー等のはんだ接合,樹脂製成形品とプリント基板の組み立て等の工程が不要となる。電子部品の実装,射出成形,インクジェット印刷の3つに工程を大幅に簡素化できるため,多品種少量生産や需要変動に応じた生産に柔軟に対応できる製造ラインの構成が可能だとしている。