富士通研究所の中川章氏は,平成28年春の褒章において,「デジタル映像の符号化技術と伝送装置の開発」により紫綬褒章を受章する(ニュースリリース)。
紫綬褒章は,科学技術分野における発明・発見や,学術およびスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた個人に授与される。今回の受章は,デジタル映像の符号化技術とH.264映像伝送装置を実用化し,世界規模でのHD映像の普及に貢献したことによるもの。
2000年台前半,従来のSD映像(アナログ放送画質)より圧倒的にリアルで高品位なHD(ハイビジョン)映像の放送拡大や,テレビ・カメラ・ビデオ・PCなどでのHD映像の記録・表示の要望が高まっていたが,HD化を実現するための機器や映像伝送に関する費用負担がその実現を困難としていた。
これらの課題を解決するため,中川氏は,高品質を保ったまま低電力でHD映像の情報量を大幅に削減する映像符号化アルゴリズムの研究開発をはじめ,このアルゴリズムに基づくHD映像対応H.264符号化LSIの開発,従来,リアルタイムデータ用途に不向きとされていた公衆IP網での放送品質のHD映像配信を可能とする技術,映像多段中継時に生じる「色にじみ」の劣化を完全に抑止する技術の各研究開発を主導し,これらの技術を実用化することで,HD映像の機器・伝送コストの課題を解決した。
これらの開発により,デジタル映像の符号化技術とH.264映像伝送装置を実用化し,高解像度でリアルなHD映像の機器・伝送コストの大幅な削減を可能にした。H.264映像伝送装置は世界中の放送局で採用され,これにより民生機器から業務用放送機器までの幅広い分野でHD映像を活用した産業の発展と世界規模でのHD映像の普及に貢献した。