NEDOプロジェクトにおいて,情報通信研究機構(NICT),東京農工大学,タムラ製作所らの研究チームは,世界初となるパワーデバイス向けの酸化ガリウムエピウエハの開発に成功した(ニュースリリース)。
酸化ガリウムは,バンドギャップが大きく,高品質・大型の単結晶基板を安価に製造できることから,パワーデバイス用材料として注目される窒化ガリウムと炭化ケイ素を凌駕するポテンシャルを持つ次世代パワーデバイス材料として期待されている。
実用化されれば,6,000Vを超える極めて高い耐圧を有しながら,低損失性を併せ持ったダイオードやトランジスタを実現できる可能性があり,電気自動車,電車の電源や送電系統システムの設計に大きな変革をもたらすことが期待される。
パワーデバイス用エピウエハには,(1)エピ表面の平坦性と(2)低キャリア濃度領域での濃度制御の2つが求められる。研究チームは,エピ成膜方法としてオゾンMBE法と呼ばれる方法を採用し,結晶面方位,ドーパント種,成長温度,原料供給量等の成長パラメータを最適化した。
これらにより,パワーデバイス用エピとしての性能を満たす,1nm以下の表面粗さと,1016cm-3台の低キャリア濃度領域での制御が可能となった。このエピウエハを用いて良好な特性のショットキーバリアダイオードやトランジスタを作製できることを確認した。
これらの成果を事業化するため,タムラ製作所と研究者などの個人投資家は共同出資によりノベルクリスタルテクノロジーを設立した。外部の資本を積極的に取り込み,独立した経営陣によるスピーディーな開発,事業化を推進していくため,タムラ製作所からのカーブアウト(技術切り出し)の形態を採用している。
また,ノベルクリスタルテクノロジーはNICT技術移転ベンチャーとして,NICTから知的財産の技術移転を受けて事業を行なう。今後成長が見込まれるパワーエレクトロニクスに向け,大学・研究機関・メーカーなどへの供給を行なうとしている。
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