国立環境研究所の研究チームは,NASA(アメリカ航空宇宙局)のICESat衛星データを利用することで,世界各地の森林の炭素貯留量を高精度に計測できる技術を開発した(ニュースリリース)。従来は現地の森林に入って樹木を1本ずつ計測する必要があったが,現地に行かずに計測できるようになった。
国立環境研究所では,温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)により計測される大気中の二酸化炭素濃度データにもとづいて,森林の炭素貯留量や伐採にともなう炭素排出量の全球分布を,高い空間分解能で地図化することで,気候変動緩和策(REDD+や二国間クレジット制度等)の実現に資するための研究を進めている。
その際,排出量の検証を行なうために森林の炭素貯留量を世界中で計測することが必要となるが,従来は,多大な労力を払って1本1本の樹木を現地で計測する方法が多くの場合取られていた。
しかし今回,衛星データを利用することで現地に行かずに森林貯留量を計測できる技術を開発し,北海道とボルネオ島で検証を行なったところ,有効な結果が得られた。
衛星データとしてICESatの,森林をレーザー光で照射するセンサーであるライダーのデータを用いた。この衛星は,衛星の軌道直下において170mごとに約60m径の範囲をレーザー光で照射して,地表面から反射されたレーザー光の強度変化を波形として記録している。
この波形の長さや形状を解析することで,樹高や森林バイオマスを推定することができる。そこで,北海道(温帯林)とボルネオ島(熱帯林)という,森林タイプの異なる2地域をテストサイトとして,技術開発を行なった。
その結果,衛星ライダーの観測した波形の特徴量を複数組み合わせて利用することで,樹高と森林バイオマスを高精度に計測することが可能であることがわかった。
研究グループでは,「いぶき」による大気中の二酸化炭素濃度の計測と,ICESat衛星による森林の炭素貯留量の計測を組み合わせることで,炭素循環過程の解明への貢献が期待できるとしている。
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