国立天文台,太陽系外の「カイパーベルト」を発見

国立天文台ハワイ観測所(すばる望遠鏡)の研究者が率いる国際研究チームは,ジェミニ南望遠鏡を使った観測により,ケンタウルス座の方向にある太陽型星 HD 115600 の周りに,塵がリング状に分布した構造があることを発見した(ニュースリリース)。

太陽系の海王星軌道の外側にはカイパーベルトと呼ばれる領域があり,そこには主に氷から成る天体が多数存在する。これら氷天体は惑星形成の名残とも考えられるため,カイパーベルトは若かりし頃の太陽系の素顔に迫る上での手がかりを与えてくれる。また,太陽に似た若い恒星にある「カイパーベルト」を観測すれば太陽系が若かった頃にどのような姿をしていたのかがイメージできる。

しかし,これまでに直接撮影された塵のリングは,太陽に比べてかなり重い恒星にあったり,中心星から遠い距離にあったり,そもそも恒星が生まれた環境が太陽と大きく異なっていたりと,太陽系のカイパーベルトに似ているとは言いがたいものだった。

今回,国立天文台の研究チームは,南米チリにあるジェミニ南望遠鏡に搭載された Gemini Planet Imager(GPI)を使った観測により,若いカイパーベルトにそっくりかもしれない塵のリングを,ケンタウルス座にある HD 115600 という恒星の周りに発見した。

塵のリングが見つかった HD 115600 は,太陽より少しだけ重い恒星で,太陽が生まれた環境に似た星団に存在し,発見された塵のリングは,太陽系のカイパーベルトとほぼ同じ距離にある。また,観測された塵のリングの中心が恒星の位置から少しずれており,これは,恒星の周りを未知の惑星が回っていて,惑星との相互作用でリングに歪みが生じたと考えれば説明がつく。さらに,観測された塵のリングの「色」が,カイパーベルトの主要構成物質である氷やケイ酸塩などの塵で説明しうるということも指摘した。

今回の発見はジェミニ南望遠鏡 GPI によってなされたものだが,最先端技術に基づき太陽系外惑星や太陽系外カイパーベルトを見つけ出すための観測装置 SCExAO も,すばる望遠鏡で観測を始めている。これにより,以前は50分以上の露出でも見つけられなかったものが,たった50秒で見つけられるようになるという。カイパーベルトに似た塵のリングや太陽系外惑星をたくさん発見され,「第二の地球」発見への足がかりとなることが期待できるとしている。

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