日本電信電話(NTT)は,光のパタンを投影することで,止まった画像にリアルな動きの印象を与えることのできるまったく新しい発想に基づく光投影技術「変幻灯」を開発した(ニュースリリース)。
変幻灯は,写真,絵画,壁紙などの静止対象にリアルな動きを与えることができる。その視覚体験は,これまで人間が経験したことのない新奇なもの。止まっていると思っていた絵画や写真が,変幻灯に照らされることで突然ゆれたり,しゃべったりする。
具体的には,コンピュータの中で静止対象が動く映像を作成し,そこからモノクロの動き情報を取り出したものを投影する。投影によってモノクロの動きのパタンだけを静止画に加えると,静止画に含まれている色や形はそのまま見えている。画像としては正しく動画になっていないが,それを見た人間の脳は,まるで正しい動画であるように知覚する。
普通の映像を見るとき,脳は映像中の色,形,動きを個別に処理し,後でそれらを巧く統合して一つの世界を見ている。変幻灯を体験するとき,ユーザは色や形は止まった対象から取得し,動きは投影されたモノクロの映像から取得する。このとき色や形は止まっているので,動きと空間的に「ずれ」が生じる。
しかし,辻褄の合ったようにものを見ようとする脳は動くので,色,形を統合する際に,その「ずれ」を補正する。そのため,変幻灯を体験する際には,ユーザは動き,形,色のずれに気づかずに,あたかも止まった対象の色や形が動いているように感じる。これらは,NTTコミュニケーション科学基礎研究所が長年研究を進めてきた,人間の動きや質感の知覚特性を踏まえた成果。
これを応用して3次元対象を揺らすこともできる。透過型ディスプレイにモノクロの動きパタンを表示し,3次元対象と動きパタンとが重なる点から見ると,対象がゆれているように見える。
印刷物,写真,絵画などの伝統的な映像表現に多様かつ斬新な表情を加えることのできる「変幻灯」は,今後,サイネージ,インテリア,エンターテインメントなど幅広い分野での応用が期待されるとしている。
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