東大ら,2台の時計が1秒ずれるのに160億年かかる「光格子時計」を開発

JST戦略的創造研究推進事業において,東京大学と理化学研究所らは,低温環境で原子の高精度分光を行なう光格子時計を開発し,2台の時計が2×10-18の精度で一致することを実証した(ニュースリリース)。この精度は,2台の時計で1秒のずれが生じるのに160億年かかることに相当する。これらは,次世代の時間標準の基盤技術となる重要な成果。

光格子時計は,現在の「秒」を定義するセシウム原子時計の精度を1,000倍近く向上させる次世代の時間標準として,世界中で盛んに研究されている。光格子時計の精度の向上を阻む最大の困難は,原子を囲む室温の壁から放射される電磁波(黒体輻射)が,原子の固有の振り子の振動数を変化させてしまうことだった。

研究グループは,低温に冷却した恒温槽の中でストロンチウム原子の高精度分光を行なうことで,黒体輻射の影響を1/100に低減する低温動作・光格子時計を開発した。検証のために低温動作・光格子時計を2台開発し,約1ヵ月間にわたって比較することで,それらが2×10-18の精度で一致することを確認した。

このような高精度な原子時計の実現は,「秒の再定義」を迫るだけでなく,従来の時計の概念を超える新しい応用の可能性を秘めている。「重力が強いところでは時間がゆっくり進む」という一般相対論的な効果から,離れた場所にある2台の原子時計の重力による相対論的な時間の遅れを検出することで,土地の高低差を測る「相対論的な測地技術」への展開のほか,物理定数の恒常性の検証など,新たな基盤技術の創出や新しい基礎物理学的な知見をもたらすことが期待されるとしている。

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