北大,安価で安全な軽金属イオンを含む多孔性軽金属錯体の合成法を開発

JST戦略的創造研究推進事業において北海道大学は,安価で生物に優しい軽金属イオンを含む多孔性軽金属錯体の新規合成手法を開発した(ニュースリリース)。

金属イオンと有機配位子から組み上がる多孔性金属錯体は,触媒材料や物質の分離,吸着材料として使われてきたゼオライトや活性炭に続く次世代の多孔性材料として注目されている。これまで,金属イオンとして重金属イオンが主に使われてきた。一方で,重金属イオンよりも安価で生物に優しい軽金属イオンは多孔性構造を形成するための“相棒”となる有機配位子が限られていたため,その利用が制限されていた。

研究グループは,軽金属イオンの“相棒”としてほとんど用いられてこなかった,中性有機配位子を用いる新しい合成手法を見いだした。これまで,中性有機配位子を有する多孔性軽金属錯体はわずかではあるが報告されていたが,それらは偶然得られたものであり,明確な設計指針の下で合成された例はなかった。

今回,電荷分離した構造をもつ中性有機配位子と軽金属イオンであるマグネシウムやカルシウムイオンを補助有機配位子の共存下で反応させることにより,中性有機配位子で架橋された多孔性軽金属錯体を狙って合成することに成功した。

さらに,得られた多孔性軽金属錯体は細孔中に存在する溶媒分子を除去したあとも安定で,室温で二酸化炭素(CO2)とメタンの混合ガスからCO2を高選択的に分離できることを実証した。これまで明確な設計指針の下,中性有機配位子によって連結された多孔性軽金属錯体の合成例はなく,この合成手法が多孔性軽金属錯体の構造の多様化に極めて有効であることがわかったという。

これまで多様な構造をもつ多孔性軽金属錯体の合成は困難だったが,電荷分離した中性有機配位子を利用するこの合成手法を適用することにより,マグネシウムやカルシウムといった安価で生物に優しい金属イオンから構築される多孔性軽金属錯体を合理的に合成することに成功した。

また,電荷分離した中性有機配位子は,アルミニウムやナトリウム,カルシウムといったほかの軽金属イオン架橋にも有効であると考えられ,多孔性軽金属錯体の構造多様化,さらにはガス貯蔵,分離膜,ドラッグデリバリーなどといった実用化の道が加速度的に開かれることが期待されるという。研究グループは今後,開発した合成手法により多様な構造をもつ材料合成を行なうことで,安価で安全な多孔性金属錯体が実用化が期待できるとしている。

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