国際電気通信基礎技術研究所,日本電信電話,島津製作所,積水ハウス,慶應義塾大学は,共同で「ネットワーク型ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)」の研究開発を推進し,一般の利用者が日常的に生活する場において,その活動を支援するための,新しいインタフェースとしてのBMIとその周辺技術の開発に成功した(ニュースリリース)。
この研究開発は,高齢者や体の不自由な方々の自立社会の実現に役立つ基本技術として,これまでの実験室環境だけで使えるBMIを実際の生活環境で利用できるようにするための技術の実現を目指してきたもの。開発したネットワーク型BMIは,自宅や診療所などで,脳情報,環境情報などを携帯型の脳活動計測装置や各種センサで取得し,ネットワークを通じて大規模なデータとして伝送,解析することで,一般の生活環境において,特別な訓練や負担なしに利用できるBMIの実現を可能とする。
開発した装置は,脳波計測(electroencephalography; EEG)と近赤外分光脳計測(near-infrared spectroscopy; NIRS)の組み合わせによるもの。計測された脳活動を,ネットワークを介してクラウド上あるいは環境内に置かれた脳活動データベースと照合する脳情報解析技術により,利用者の動作意図・情動状態(不快感など)を読み出す。利用者が,家電を操作するなど,生活の中で自然に体を動かす際に生じる脳活動をNIRSで捉え,その操作を支援する。また,利用者が不快に感じる際などの状態をEEGで検知し,それを介助者などへ伝えることができる。
中でも島津製作所は言語・視覚・聴覚・運動などに伴う脳活動を,頭皮上から近赤外光を照射することによってリアルタイムで観測できるNIRS装置を開発および製造販売している。今回,生活環境で利用者の脳活動を計測できるようにするために,NIRS装置をバックパック型ベストに収納,コンパクトかつ軽量化,また,脳活動計測データを無線で送信できるようにした,携帯型脳活動計測装置を開発した。
その他,車いすなどの移動支援機器が室内を安全に移動するための移動支援機器の安全制御技術,BMI利用者の位置情報などを用いることでプライバシーやTPOに配慮したBMI支援を可能とするネットワークエージェント基盤技術,それらの動作検証・評価を行なうため,脳情報を活用した日常生活を再現可能な環境である実環境実験設備(BMIハウス)の構築にも成功した。さらに,BMI利用者が体を動かしにくい状況では,脳活動と連動して身体装着型ロボットアクチュエータを動かすことで,利用者自身の動作をアシストすることができるようになった。
これらの技術により,高齢者や体の不自由な方々のみならず一般の人が日常的に生活する場において,その意図や情動を脳から読み取り,プライバシーなどに配慮しながら活かすことで,充実した生活につなげる新しいインタフェースにすることができたとしている。
この技術は,介護・介助を必要とする人だけを対象とするものでなく、「脳を見まもる」ことで、様々な場面で人々のコミュニケーションを豊かにし,個人として充実した生活を継続する環境づくりのための技術として期待されており,研究グループは今後,各種サービスの実用化を目指していく。
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