名古屋市大,3Dプリンタで作製した臓器模型によるロボット手術シミュレーションを実施

古屋市立大学は,9月上旬に名古屋市立大学病院で実施した60代の腎臓がん患者のロボット支援による腹腔鏡手術において,3Dプリンタで作製した臓器立体モデルをロボット手術のシミュレーションに初めて適用した(ニュースリリース)。

同大では革新的な医療機器等の研究開発を目的とした「医療デザイン研究センター」を8月に設置し,これまでに3Dプリンタで作製した臓器立体モデルの医療への応用について研究を進めてきた。今回,そのひとつとして患者のCT画像データをもとに,極めて精度が高く,実際の臓器のように弾性のある腎腫瘍モデルを3Dプリンタで作製することに成功した。

患者は,癌病巣の一部が腎臓に埋没しており,従来は腎臓全体を摘出する手術方法が採られていたが,今回の手術では腎臓の機能を温存するために病巣を部分的に切除する手術方法が採用された。

腎臓には多くの血管などがあり,正常な腎臓組織をできるだけ傷つけることなく病巣部分だけを切除することが必要なため,柔軟性の高い特殊な材料を用い3Dプリンタで作製した,弾性腎腫瘍モデルを手術支援ロボット『ダ・ヴィンチ』で切除し,手術の事前シミュレーションを実施した。

手術後の患者の経過は良好で,研究グループでは,臓器立体モデルを利用した手術シミュレーションが「見えない手術」を可視化し,より安全で患者に負担の少ない手術が可能になることを実証したとしている。

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