大阪大学を中心とする共同研究グループは,免疫記憶を司っている主要な免疫細胞である記憶B細胞と記憶T細胞(記憶濾胞性ヘルパーT細胞)が近傍に存在していること,そしてこれらの細胞が素早く相互作用し,その結果記憶抗体産生応答が速やかに誘導されることを,マウスを使用した実験で明らかにした(ニュースリリース)。
人間の体は常に細菌やウイルスなどの外来異物(抗原)に曝されている。これらの抗原が体内に侵入してくると免疫応答が開始される。免疫応答の中でも重要なもののひとつが,抗原を排除するためにB細胞が抗体を産生する反応。
この抗体産生応答は,免疫系がはじめて抗原に出会った時よりも,二度目に出会った時の方がより強力にかつ速やかに引き起こされる。これは記憶免疫応答として知られており,ワクチン療法はこの応答を利用している。この記憶免疫応答は記憶B細胞や記憶T細胞によって担われる。
一般にB細胞が抗体を産生するためにはT細胞の助けが必要となる。T細胞の中でも濾胞性ヘルパーT細胞(TFH細胞)というタイプのT細胞がB細胞の抗体産生を助けるのに優れた能力を持っていることが明らかにされていた。しかし記憶B細胞による強力な抗体産生応答にもTFH細胞が関与しているのか,もしそうならばどのようなメカニズムでTFH細胞が活性化されるのかは不明だった。
今回の研究では,記憶T細胞と記憶B細胞が直接相互作用することで,記憶免疫応答(記憶抗体産生応答)が効率良く誘導される仕組みが明らかとなった。この記憶抗体産生応答では記憶TFH細胞がキープレーヤーとして働く。従ってこの記憶TFH細胞を効率良く誘導することができれば,より良い抗体産生を目的としたワクチン療法の新規開発や改良が図れると期待できる。
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