大林組と東京工業大学,ビジュアル・テクノロジー研究所は,「人の感じる明るさ感」を基に照明などの室内の光環境を自動的に制御し,快適性を維持しながら消費電力を60%削減する光環境制御システムを共同開発した(プレスリリース)。
照明設備による消費電力は,一般的なオフィスビルの場合で全体の3分の1を占めている。従来のオフィスなどにおける照明制御は,机上面の照度を部屋全体で一定に保つように調光(光出力の調整)することが一般的だった。
近年,照明制御技術の進歩により,机上面の照度を保ちながら,その他の部分の照度を低く抑えるタスク・アンビエント照明方式が,省エネ技術として採用されている。しかしこの方式は,執務に必要な照度は確保していても,室内の雰囲気が暗く感じられるといった課題があった。また,自然光などで照度を補える箇所にも一律に照明を当てるため,無駄に電力が消費されるケースもあった。
開発したシステムは,照度ではなく「人の感じる明るさ感」を基準とするため,自然光や壁面への照明の反射などで人が明るさを感じる視覚効果を最大限に利用でき,必要な部分に必要なだけの照度を与えることで,快適性を維持しつつも,より無駄なく効率的に照明を制御する。これによって,タスク・アンビエント照明方式に比べて消費電力を約30%以上,全般照明方式と比べると約60%も削減することができる。
このシステムは,東京工業大学が開発した「人の感じる明るさ感」を数値化する指標「明るさ尺度値」を利用した。照度(モノに当たる光の量)ではなく,輝度(目に入る光の量)を基準に室内の光環境を自動的に評価・制御することによって,低照度でありながら明るい印象を持つことができるという。
この光環境制御技術は,輝度測定システムと光環境評価システムからなる。設備制御には標準的なデータ通信を採用しており,後付けによるリニューアルも可能。コストは,新築の場合では省エネ効果により約6年で回収できるとしている。