理研、細胞外マトリクスの形態形成における新たな働きを発見

理化学研究所は、ショウジョウバエの胚において、細胞外マトリクス(基質)の弾性力が気管の形態形成を制御していることを明らかにした。そして、管の長さと形状の安定性は気管上皮細胞の拡張力が細胞外マトリクスの弾性力と拮抗することで決まるという新しい仕組みを見いだした。

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生物の体内では、血管、呼吸管など管状組織のネットワークが縦横に張り巡らされ、血液や空気などの物質循環が行われている。物質がスムーズに循環するためには、部位ごとに管の太さが均一にそろっている必要がある。成長期のヒトの血管系では拍動の物理的な刺激に応じて血管内の細胞の再配置・増殖が起こり、血流が最適化されるように管の形状が変化する。

しかし、胚発生においては血液循環が始まる前にすでに血管はある程度適正な形状を獲得しているが、この循環に非依存的な管構造の適正化の仕組みはよく分かっていなかった。

過去の研究から、ショウジョウバエ胚の気管の内側(管腔)にはタンパク質とキチン質を主成分とした細胞外マトリクスが蓄積し、気管の太さと長さという2つの形状特性を制御していることが知られていた。しかし、長さの制御において、細胞外マトリクスの果たす役割の詳細については未解明のままだった。

国際共同研究グループは、気管に蓄積する細胞外マトリクスの性状を詳細に解析したところ、粘り気がある液体成分と弾性体成分で構成されていることを見いだした。これらの成分を損なう条件や、気管上皮細胞の管腔側の細胞膜(アピカル細胞膜)が過剰に拡大するショウジョウバエの変異体を解析し、物理モデルで検証した。

その結果、気管上皮細胞のアピカル細胞膜の拡張力と細胞外マトリクスの弾性力が拮抗することで力学的に安定し、適正な長さの気管ができることを見いだした。

この成果は、細胞外マトリクスの形態形成に関わる新たな機能の発見であり、細胞が生物の管状組織を形作る細胞生物学的見地からも興味深いもの。

詳しくは理研プレスリリースへ。