東大ら,ゲノム探索により32員環からなる新規チオペプチドを発見

東京大学,富山県立大学,北里大学らのグループは,抗生物質がきかない細菌(多剤耐性菌)に対しても抗菌作用を示すチオペプチド化合物の一種で,従来のものとは化学構造が大幅に異なる化合物を放線菌のゲノム探索と異種発現法を用いて発見した(プレスリリース)。

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土壌中に住む細菌の一種,放線菌は結核の特効薬ストレプトマイシンをはじめ,多様な抗生物質を作ることが知られている。しかし,放線菌が作る化合物の全貌は明らかになっていないため,放線菌において未知の化合物で新規の医薬品の礎となる新しい化学構造を有するものが発見される可能性がある。

ラクタゾールと命名した今回発見した化合物は,32の原子から構成される環状構造を有することやアミノ酸の組成などの点において,これまでに知られているチオペプチドと類似性が低いことが分かった。

また,ラクタゾールの合成に関わる遺伝子数は6個であり,従来報告されている最小のチオペプチド生合成遺伝子群に比べて半数程度とかなり少ない特徴があった。この化合物は抗菌作用を示さなかったものの,骨形成に関わる遺伝子発現を阻害する効果が認められた。

チオペプチドは他の抗生物質と比較して,比較的容易に類縁化合物が作製できることに加えて,ラクタゾールは遺伝子数が少なく,遺伝子組換え等の遺伝子改変が容易であることから,ラクタゾールを基にした新たな抗生物質の開発など,今回の発見は今後の抗生物質を開発する上で基盤となるもの。