環境省、国立環境研究所及びフマキラーが連携して地域根絶に向けた防除試験を実施し、国内有数の海上運輸の物流拠点であり、平成22年10月にアルゼンチンアリを初確認した東京都大田区の大井埠頭、城南島で、99%以上の防除効率を達成するに至った。
研究グループは、アルゼンチンアリの分散を想定して、生息が確認されたエリアを包囲するかたちで防除計画区域を設定。殺虫剤フィプロニルがアルゼンチンアリに対して高い効果を示すことが明らかであったことから、フィプロニルを主成分とするベイト剤及び液剤を用いた化学的防除を採用した。
フィプロニルは、昆虫の神経系に作用して殺虫効果を示す殺虫剤。遅効的(すぐに殺虫効果を示すのではなく、ゆっくりと効く)で、餌に混ぜて働きアリに巣に持ち帰らせることにより、巣内の他の成虫や幼虫にフィプロニルが浸透して、巣内の個体を死滅させる効果がある。
試験開始時の2011年度4月から防除実施後の8月にかけてのアルゼンチンアリの密度の変化率を計算した結果、無処理区では84.61倍となり、それに対して、低薬量設置区及び高薬量設置区では、いずれも0.21倍になった。これらの数値より低薬量設置区及び高薬量設置区の初年度の4月から8月の防除効率は、いずれも99.75%であり、低薬量でも十分に高い効果があることが示された。
これまで世界的にも、外来種としての本種の根絶に成功した事例はほとんどなく、今回の試験により、根絶に向けた防除手法が確立される可能性が示された。現在も試験は継続中だが、これまでの成果をふまえ、環境省で作成している「アルゼンチンアリ防除の手引き」を改訂した。
特定外来生物であるアルゼンチンアリ(南米原産)は、平成5年に広島県廿日市市において国内初の定着個体群が確認されて以降、平成25年5月現在までに1都2府9県において、定着が確認されている。
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