東北大、薄膜作製中のリチウム欠損メカニズムを解明

東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)助教のダニエル・パックウッド氏、講師の白木将氏、准教授の一杉太郎氏の研究グループは、リチウムイオン電池の正極材料として知られるマンガン酸リチウム薄膜を合成する際に、薄膜中のリチウムが欠損するメカニズムを数学的に解明した。

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リチウムイオン2次電池は、大きなサイズの単結晶合成が難しい電池材料が多く、エピタキシャル成長した薄膜を活用する研究が重要で、薄膜合成は基板上でエピタキシャル成長させる手法が一般的。その中でも酸化物は、気化する温度が非常に高いため、レーザを照射して気化させるパルスレーザ堆積法が広く利用されており、電池材料の薄膜合成にも利用されている。

しかしながら、コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムなど、リチウムを含んだ遷移金属酸化物の薄膜合成では、リチウムの欠損などその成長メカニズムに不明な点が多く、高品質な薄膜を合成するためにもその解明が求められていた。また、薄膜成長のシミュレーションには、乱数を利用したモンテカルロ法などが用いられてきたが、計算に長時間を要するなどの問題があり、簡便で短時間に計算できるる解析法やモデルの構築が必要とされていた。

研究グループは、マンガン酸リチウムの薄膜合成において、合成時に導入する酸素ガスの圧力と、薄膜中に含まれるリチウム原子とマンガン原子数の関係を調べた。また、リチウム原子、マンガン原子、酸素分子の質量および速度を考慮した衝突・散乱モデルを構築し、薄膜合成時の原子の振る舞いをシミュレーションして薄膜内に取り込まれる原子数比を計算した。

その結果、薄膜中のリチウム原子が欠損すること、ならびに酸素の圧力が高くなるほどリチウム欠損量が多くなることを見いだした。また、シミュレーション解析により、薄膜中のリチウム欠損は、質量の軽いリチウム原子が酸素分子との衝突により強く散乱され、広範囲に拡散することが原因であることも明らかになった。

この成果は、不純物の少ない高品質な薄膜を合成し、リチウムイオン電池や機能性酸化物を用いた高性能デバイスの開発に大きく道を拓くもの。

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