理研、マイクロ流体チップに使う小型電動バルブを開発

理化学研究所生命システム研究センター集積バイオデバイス研究ユニットユニットリーダーの田中陽氏と東海ゴム工業新事業開発研究所・SR研究室研究員の藤川智宏氏、および東京大学大学院工学系研究科助教の嘉副裕氏、教授の北森武彦氏らとの共同研究グループは、化学・生化学実験や医療診断に適したマイクロ流体チップに組み込む小型電動バルブを開発した。

マイクロ流体チップは、従来実験室で分かれた複数の化学・生化学分野の実験・分析行程を集積化した次世代医療診断や生化学実験に有用なチップ。これは、数cm角の基板上に幅・深さ1 mm以下の流路を加工した小型で高速処理が可能なデバイスで、省エネや環境負荷軽減が期待されている。 マイクロ流体チップ上の流体を制御するには非常に小さなバルブが必要。細胞分離や各種分析、医療診断用のマイクロデバイスなどでは、コンプレッサやポンプなどで空圧を発生させ、柔軟な樹脂の膜を動かして開閉するバルブが利用されている。しかし、空圧発生源はマイクロチップに搭載するには大きすぎ、音や振動も激しいため、小型デバイスには利用されていなかった。

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そこで共同研究グループは、電圧を印加すると一定方向に大きく変形する特殊電動ポリマーを用いて超小型の電動バルブを開発。実際にこのバルブを用いて流体の流れを制御したところ、バルブの応答速度は約0.7秒、耐圧は4.0キロパスカル(kPa)と、実用に十分の性能があることを実証した。 今回の成果により、マイクロ流体チップ全体をコンパクト化できるため、今後、小型医療診断装置や生化学実験ツールなど、持ち運び可能なデバイスへの応用が期待できる。

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