一般社団法人メディカル・イメージ・コンソーシアム(MIC)は2014 年11月10日に実施した8K(スーパーハイビジョン)内視鏡手術と,同年12 月5日に行なった8K顕微鏡を利用した眼科手術の成果をそれぞれ報告した。
2013 年12月にブタによる8K手術実験を行なったが,今回初めてヒトに対する臨床に適用。内視鏡手術は杏林大学医学部付属病院で行なわれ,杏林大学消化器・一般外科教授の森俊幸氏が執刀。眼科手術は眼科三宅病院で行なわれた。ヒトへの手術にあたっては大学の倫理委員会の承認を得て,また患者のインフォームドコンセントを取るなど準備を進めてきた。手術はいずれも成功を収め,8K映像技術が医療応用に極めて有用であることを示した。
一方で,開発課題も明らかになったという。眼科手術においても8K技術の効果が発揮されたとする一方,内視鏡手術とはまた違った課題が浮き彫りになったとしている。MICは,医師や医療機器メーカなどが相互協力し,新たなメディカル・イメージング機器の創出を目的に設立されたが,8K システムはその一環として開発を進めているもので,2017 年にも8K内視鏡システムを上市したい考えを示している。
内視鏡手術では単板式3,300 万画素の2.5 インチCMOSセンサを搭載した8Kカメラへッドに硬性鏡を取り付け,70代の胆嚢結石患者2名に対する胆嚢摘出術に導入。眼科手術では同カメラヘッドを顕微鏡に設置し,緑内障,白内障,増殖性硝子体網膜症に対する硝子体手術にそれぞれ取り入れた。モニターはNHKとシャープが共同開発した直視型の85 インチ液晶ディスプレイを用いた。
8K内視鏡手術の成果報告を行なった,MIC理事長の千葉敏雄氏(国立成育医療研究センター臨床研究センター副センター長)は,「手術を安全かつ的確に行なうために認識が重要となる,胆嚢付近の動脈などの血管や胆管が非常に鮮明に映し出されていた。このような場面で8Kの果たす役割は大きい」と語った。また,ズームしても映像はボヤけることがないのも8Kの強みとなっている。
一方,今回の臨床で明らかになった開発課題は高感度化,カメラヘッドのサイズと重量,オートフォーカス化,光学系の改善,3D化が挙げられた。
このうち,高感度化について,MIC副理事長の谷岡健吉氏は「現状の感度は2,000 lx,F4.8 で,2Kカメラに比べて40 分の1 しかない。CMOSイメージセンサの光電変換回路に増幅器を設けることで,10倍あるいは20倍に上げることができるが,時間を要する。まずは2 年後の実用化までに5 倍以上を目指す」とした。
カメラヘッドの小型・軽量化は,ヘッドを分離することで可能になるとの考えを示し,CMOSイメージセンサ部とその他の回路部を二つに分けてケーブルで繋ぐことで大幅な小型・軽量化が図れるとした。光学系に関しては,特に眼科顕微鏡では手術用コンタクトレンズを含め,複数のレンズを介するため,収差が発生する。収差の問題が8Kの高精細化を阻害していることも明らかになったとし,光学系の最適化が求められている。
MICは,これらの課題解決に向けて会員の協力を得ながら,開発を進めていく考え。8Kカメラ・ディスプレイ市場が付加価値の高い医療分野から立ち上がることで,その後の放送分野への需要にもつながっていくものと見られている。◇
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